判旨
公職選挙法221条1項4号の「選挙人」とは、必ずしも当該候補者の選挙区における選挙人に限定されず、他の選挙区の選挙人であっても、選挙に関し投票をし、または投票をしないことの報酬として供応等を受けた場合には、同号の罪が成立する。
問題の所在(論点)
公職選挙法221条1項4号(利害誘導罪等)の主体・客体となる「選挙人」について、当該候補者が立候補している特定の選挙区の選挙人であることを要するか。
規範
公職選挙法221条1項4号にいう「選挙人」とは、特定の選挙において選挙権を有する者を指し、事案に係る具体的な選挙区の選挙人であるか否かを問わない。したがって、当該候補者の選挙区外の選挙人であっても、選挙運動に関し、投票または投票の棄権の報酬として利益を授受した場合には、同号の構成要件を充足する。
重要事実
被告人は衆議院議員選挙において、長野県第2区から立候補した候補者Aの選挙運動者であった。被告人は同選挙の選挙人であったが、弁護人は、被告人が必ずしも当該選挙区(長野県第2区)の選挙人ではないことを理由に、公職選挙法221条1項4号の適用を争い、原判決の理由不備および判例違反を主張して上告した。
あてはめ
本件被告人は衆議院議員選挙の選挙人であり、かつ候補者Aの選挙運動者であった。仮に被告人がAの立候補した長野県第2区の選挙人でなかったとしても、選挙に関し報酬として供応等を受ける行為は、選挙の公正を害するものであり、同法221条1項4号の禁止する行為に該当すると評価できる。さらに、本件では証拠によれば被告人が当該選挙区の選挙人であることも明白であり、構成要件の充足に疑いはない。
結論
被告人が当該選挙区の選挙人であるか否かにかかわらず、選挙人としての地位を有しつつ選挙運動の報酬として利益を得た以上、公職選挙法221条1項4号の罪が成立する。
実務上の射程
選挙犯罪における「選挙人」の解釈について、限定解釈を排した実務上の基準を示すものである。答案上は、選挙区の画定という形式的要件よりも、選挙の自由と公正という保護法益の観点から「選挙人」を広く解すべき場面で引用できる。
事件番号: 昭和28(あ)3193 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法221条1項4号の被買収罪は、選挙人または選挙運動者が財産上の利益等を受けることを処罰するものであり、利益を受けた者が選挙運動者である限り、必ずしも当該選挙区の選挙人でなくとも同罪は成立する。 第1 事案の概要:被告人は、昭和27年の衆議院議員総選挙において、長野県第2区から立候補した候…