判旨
被告人に実刑を科すことによりその家族が生活困難に陥るとしても、当該判決は憲法25条に違反するものではない。
問題の所在(論点)
刑事裁判において被告人に実刑を科すことにより、その家族が生活困難に陥る場合、当該判決は憲法25条に違反するか。
規範
刑罰権の行使(実刑判決)の結果として生じる付随的な不利益(家族の生活困窮等)は、生存権を規定する憲法25条の違反を構成しない。
重要事実
被告人に対し実刑が科されたが、弁護人は、被告人が収監されることでその家族が生活困難に陥ることを理由に、実刑判決が憲法25条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所大法廷の判例(昭和23年4月14日判決)に照らせば、刑罰の執行に伴い家族が経済的困窮等の苦境に立たされることは、刑罰制度の運用上避けがたい帰結であり、これが直ちに憲法25条の保障する生存権を侵害するものではないと判断される。
結論
本件上告は棄却される。被告人に対する実刑判決は憲法25条に違反しない。
実務上の射程
刑事弁護において、家族の状況を理由とした憲法25条違反の主張は認められない。実務上、家族の困窮は憲法問題としてではなく、刑法66条の酌量減軽や執行猶予の適否を判断する際の情状(量刑上の考慮要素)として主張すべき事項である。
事件番号: 昭和30(あ)1576 / 裁判年月日: 昭和30年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項の生存権規定は、犯罪行為を正当化し、あるいはその違法性を阻却する根拠とはならず、困窮を理由とする犯罪についても実刑を免れ得るものではない。 第1 事案の概要:被告人は犯罪行為に及んだが、その動機・背景として、自らが最低限度の生活すら営むことができない窮状にあったと主張した。被告人は、…