判旨
被告人に実刑が科せられることによりその家族が生活困難に陥るとしても、憲法25条の規定には違反しない。
問題の所在(論点)
刑事裁判において被告人に実刑を科すことが、その家族の生活を困窮させる結果となる場合に、憲法25条が保障する生存権に抵触し、違憲となるか。
規範
刑罰権の行使(実刑の科刑)が、受刑者の家族の生活に困窮をもたらす結果となったとしても、それは国家が直接に生存権を侵害したことにはならず、憲法25条の生存権保障の規定に違反するものではない。
重要事実
被告人が刑事事件により実刑判決を受けたのに対し、被告人側は、実刑を科せられることによってその家族が生活困難に陥ることは生存権を保障した憲法25条に違反するものであると主張して、上告を提起した。
あてはめ
最高裁判所は、昭和23年4月7日の大法廷判決を引用し、実刑判決に伴う家族の生活困難という事象は、刑罰の執行に伴う事実上の不利益に過ぎないとの立場を維持した。家族の生活維持は、刑事罰の正当な行使を妨げる理由とはならず、実刑判決そのものが直ちに生存権を侵害する違憲なものとは解されないと判断した。
結論
被告人に実刑を科すことによって家族が生活困難に陥るとしても、憲法25条に違反するものではないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事弁護において、被告人の家族の困窮状況を量刑上の情状(刑訴法248条等参照)として主張することは可能であるが、それを憲法違反の理由として上告理由(刑訴法405条1号)に掲げることは、判例の射程内では認められない。
事件番号: 昭和26(あ)4957 / 裁判年月日: 昭和28年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」の意義及び同36条が禁止する「残虐な刑罰」の意義について、従前の判例を維持し、上告理由にあたらないと判断した。 第1 事案の概要:被告人が憲法37条1項の「公平な裁判所の裁判」を受ける権利の侵害、および憲法36条の「残虐な刑罰」の禁止違反などを理由とし…