判旨
被告人が地元顔役であるという属性自体により不当な差別的判断が行われた事実は認められず、正当な行為か否かや畏怖の結果の有無を証拠に基づき判断した原判決に憲法違反の点はない。
問題の所在(論点)
被告人が「地元の顔役」であることを理由に、正当行為の成否や畏怖・喝取の有無を予断に基づいて認定した原判決に、憲法上の差別禁止や訴訟法上の事実認定の適正に反する違法があるか。
規範
裁判所が特定の属性(地元顔役等)を有する被告人に対し、その属性のみを理由として行為の正当性を否定したり、採証において差別的な取り扱いをしたり、客観的事実を等閑視して畏怖・喝取の事実を認定することは許されない。
重要事実
被告人らは地元の顔役と目される人物であった。第一審および控訴審において、被告人らの行為が正当行為に該当しないと判断され、また畏怖の結果として報酬を喝取したとの事実認定がなされた。これに対し弁護人は、被告人らが「顔役」であることを前提とした偏見に基づく事実認定であり、憲法違反および訴訟法違反(罪となるべき事実等の不掲示)があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決が被告人らの属性ゆえに正当行為を否定し、あるいは採証上の差別を行った事実は認められない。また、属性のみを理由に事案の性質を無視して畏怖の結果と断定したり、正当な報酬を喝取と擬律したりしたことも認められない。さらに、原判決が第一審の事実および証拠を引用した趣旨は明白であり、罪となるべき事実や証拠の標目を示さないという違法も存在しない。
結論
憲法違反および法令違反の前提を欠き、刑訴法405条の上告理由に当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所が被告人の社会的地位や属性に引きずられて事実認定を歪めていないかをチェックする際の一般的規範を確認したものである。実務上は、主観的な属性ではなく客観的な証拠に基づく認定の重要性を強調する文脈で参照される。
事件番号: 昭和28(あ)588 / 裁判年月日: 昭和28年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留中に行われた供述調書を証拠とすることの適法性、及び起訴後の勾留に違法があったとしてもそれが直ちに判決に影響を及ぼすとはいえないことが示された。 第1 事案の概要:被告人が起訴前および起訴後の勾留期間中に供述を行い、その内容が供述調書として作成された。弁護人は、起訴前の勾留中の供述調書を…
事件番号: 昭和54(あ)396 / 裁判年月日: 昭和54年9月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による公訴の提起が、適正な裁量基準を逸脱し、被告人の属性のみを重視して不当な差別の意図でなされたと認められない限り、公訴権の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が暴力団組員であることを理由に、公訴の提起がなされた事案。弁護人は、検察官が被告人の属性のみを重視し、不当な差別の意図をも…