証拠調に関する検察官の発言が妥当でないとしたところで、当時被告人及び弁護人は何らの異議申立もしなかつたのであるから、これを抑止しなかつた裁判所の措置を違法ということはできないのみならず、結局証人は質問され、書証は当時提出されなかつたのであるから、訴訟手続に影響したものでないので違憲論はその前提を欠く。 註・検察官の発言は、書証に同意せずに証人尋問を請求した被告人を非難する趣旨のものである。
証拠調に関して検察官が妥当でない発言をした場合と憲法第三七条第一項
憲法37条1項,刑訴規則190条
判旨
検察官の不適切な発言に対し、被告人及び弁護人が異議を申し立てなかった場合には、裁判所がこれを抑止しなかったとしても違法とはいえず、また当該発言が訴訟手続に実質的な影響を与えない限り、憲法違反の問題は生じない。
問題の所在(論点)
検察官の不適切な発言を裁判所が抑止しなかったことが、被告人側からの異議申立がない場合においても、適正事由を保障した憲法37条1項に違反し、または訴訟手続の違法を構成するか。
規範
検察官の発言等の訴訟行為が不適切である場合であっても、被告人側から特段の異議申立がなされない限り、裁判所が職権でこれを抑止しなかったことをもって直ちに違法と断ずることはできない。また、当該行為が最終的に証拠の採否や取調べに影響を及ぼさず、訴訟手続の公正を実質的に害しないのであれば、憲法37条1項等の適正事由を侵害したものとはいえない。
重要事実
被告人の公判手続において、検察官が不適切と思われる発言を行った。これに対し、被告人および弁護人は当時何らの異議申立もしなかった。裁判所も当該発言を特に抑止しなかった。その後、問題となった証人は質問を受け、関連する書証は提出されなかったという経過をたどった。被告人側は、裁判所が検察官の発言を抑止しなかったことが憲法37条1項(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、検察官の発言が妥当でないとしても、被告人及び弁護人はそれに対して何ら異議を述べていない。当事者主義的構造の下では、当事者の異議がない以上、裁判所が積極的に介入しなかったことを違法と評価することは困難である。また、事後的な手続経過を見ても、証人尋問は実施されており、問題の書証も提出されなかった。したがって、当該発言が訴訟手続の結末や公正さに具体的な影響を及ぼした事実は認められず、憲法違反の前提を欠くといえる。
結論
被告人側からの異議申立がなく、かつ訴訟手続の結果に実質的な影響を及ぼしていない以上、裁判所の措置に違法はなく、憲法37条1項違反にも当たらない。
実務上の射程
訴訟指揮に対する裁判所の不作為を争う際の限界を示す。当事者による異議申立(刑訴法309条等)の有無が、事後的に手続の違憲・違法を主張する際の重要な考慮要素となる。また、「訴訟手続に影響したものでない」という評価は、上告理由や控訴理由の判断における実質的不利益の有無の基準として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2107 / 裁判年月日: 昭和27年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において証人尋問等の事実取調べが行われていない場合、出頭している被告人に弁論の機会を与えなかったとしても、憲法37条(被告人の防御権・適正手続き)には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が控訴審の公判期日に出頭していたが、裁判所は証人尋問などの事実取調べを実施しなかった。その際、裁判所は出…