判旨
暴力行為等処罰に関する法律1条1項における「多衆の威力」を示した暴行の成否について、事実認定に基づき多衆の威力の活用が認められる場合には同条が適用される。
問題の所在(論点)
数人で暴行を加えた場合に、暴力行為等処罰に関する法律1条1項にいう「多衆の威力」を示したものと認められるか。同条の適用要件としての「多衆の威力」の意義が問題となる。
規範
暴力行為等処罰に関する法律1条1項の罪が成立するためには、単なる暴行では足りず、多衆(団体又は多人数)の威力を示すことが必要である。ここでいう「多衆の威力を示し」とは、多人数による集合的威圧感を相手方に認識させる形態で暴行等が行われることを指す。
重要事実
被告人両名は、多人数で集合し、その多衆の威力を示す態様によって被害者に対し暴行を加えた。第一審判決はこの事実を認定し、被告人らの行為が暴力行為等処罰に関する法律1条1項に該当すると判断した。被告人側はこれが判例に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
原審が維持した第一審判決の認定によれば、被告人等は単独の暴行ではなく「多衆の威力」を示して暴行に及んでいる。この認定事実は、同条が予定する多人数による威圧的な暴行の形態に合致しており、同条の構成要件を充足すると評価される。したがって、判例の趣旨に反する点は認められない。
結論
被告人らの行為は暴力行為等処罰に関する法律1条1項の「多衆の威力」を示した暴行に該当する。上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、暴力行為等処罰法1条の適用において「多人数での集合的な威力」の認定が不可欠であることを示唆する。答案上は、単なる共犯による暴行(刑法208条)に留まるのか、あるいは同法1条の加重類型に該当するのかを分ける際の判断指標として、威力を示す態様の有無を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1648 / 裁判年月日: 昭和26年3月13日 / 結論: 棄却
原判示第二の事実によれば、被告人A、Bら一〇名に近い町方青年が、仲間の者を殴つたのは誰かなどと叫び、吊つてある蚊帳を切り落しなどしたうえ、Cを殴打したのであるし、また同第四の事実によれば、被告人Bら一〇名に近い者が、町方青年側として参集し、Dほか二名に対し出刃庖丁を出して指を切れなどとせまり、かつ右Dを殴打したのである…
事件番号: 昭和32(あ)1568 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
暴力行為等処罰に関する法律一条一項の犯罪は、同条項列挙の罪の特別加重犯であるから、多衆の威力を示し又は数人共同して刑法二〇八条の罪を犯し因つて人を傷害した場合は、刑法二〇四条の罪のみが成立し、同法律一条一項の違反罪は成立しないものと解するを相当とする。
事件番号: 昭和24(れ)898 / 裁判年月日: 昭和29年4月7日 / 結論: 棄却
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二八条に違反しない。 二 暴力行為等処罰に関する法律は、一九四五年一〇月四日附連合国最高司令官の「政治的、公民的及び宗教的自由の制限除去に関する覚書」により廃止されたものではない。 三 暴力行為等処罰に関する法律は、ポツダム宣言の受諾により失効したものではない。
事件番号: 昭和35(あ)397 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二一条に違反しない。 二 刑訴第四〇五条第二号または第三号にいう判例と相反する判断とは、法令の解釈適用について控訴審判決が何らかの判断をした場合においてその法律的判断が判例上の法律的判断と相反する場合をいう。
事件番号: 昭和43(あ)15 / 裁判年月日: 昭和43年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による団体行動であっても、暴力の行使を伴う行為については、憲法28条が保障する正当な団体行動の範囲を逸脱し、違法性が阻却されない。 第1 事案の概要:被告人両名を含む労働組合員らが、労働争議に関連する活動の過程において、暴力の行使を伴う所為(本件所為)に及んだ。被告人らは、かかる行為が憲法…