原判示第二の事実によれば、被告人A、Bら一〇名に近い町方青年が、仲間の者を殴つたのは誰かなどと叫び、吊つてある蚊帳を切り落しなどしたうえ、Cを殴打したのであるし、また同第四の事実によれば、被告人Bら一〇名に近い者が、町方青年側として参集し、Dほか二名に対し出刃庖丁を出して指を切れなどとせまり、かつ右Dを殴打したのである。従つてこれらの事実は、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項にいう「多衆の威力を示して」刑法第二〇八条、第二二二条などの罪を犯した場合にあたるものといわなければならない。
暴力行為等処罰に関する法律第一条一項にいう「多衆の威力を示して」にあたる事例
暴力行為等処罰に関する法律1条1項,刑法208条,刑法222条
判旨
暴力行為等処罰に関する法律1条1項の「多衆の威力を示して」とは、集団の勢力を誇示して相手方の畏怖を誘うことをいい、「数人共同して」とは、同一の場所に居合わせた数人が共通の目的の下に実行行為を行うことを指す。
問題の所在(論点)
暴力行為等処罰に関する法律1条1項の「多衆の威力を示して」及び「数人共同して」の意義、並びにいかなる事実関係があれば同条の構成要件を充足するか。
規範
暴力行為等処罰に関する法律1条1項にいう「多衆の威力を示して」とは、団体又は多衆の勢力を背景として、相手方の自由な意思を制圧するに足りる威勢を示すことをいう。また、同項の「数人共同して」とは、二人以上の者が同一の場所において、相互に意思を通じ、共同して暴行等の実行行為に出ることをいう。
重要事実
被告人A、Bら10名に近い青年らが、仲間の者を殴った犯人を捜す目的で叫び声を上げ、蚊帳を切り落とした上で被害者Cを殴打した(事実2)。また、Bら10名に近い者が集団で参集し、被害者Dらに対し出刃包丁を示して「指を切れ」等と迫り、Dを殴打した(事実4)。さらに、Bほか1名は共同して被害者Eを殴打・足蹴にする暴行を加えた(事実3)。
事件番号: 昭和28(あ)1404 / 裁判年月日: 昭和28年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力行為等処罰に関する法律1条1項における「多衆の威力」を示した暴行の成否について、事実認定に基づき多衆の威力の活用が認められる場合には同条が適用される。 第1 事案の概要:被告人両名は、多人数で集合し、その多衆の威力を示す態様によって被害者に対し暴行を加えた。第一審判決はこの事実を認定し、被告人…
あてはめ
事実2及び4では、10名近い集団が気勢を上げ、刃物を示す等の威圧的な行動を伴って暴行・脅迫に及んでおり、客観的に「多衆の威力を示して」刑法208条(暴行)や222条(脅迫)の罪を犯したといえる。また、事実3では、Bらが現場において共同してEを殴打・蹴るという暴行に及んでおり、これは「数人共同して」暴行を働いたものと認められる。
結論
被告人らの各行為につき、暴力行為等処罰に関する法律1条1項を適用し、暴行罪や脅迫罪等の加重類型として処断した原判決は正当である。
実務上の射程
集団的・常習的な暴行等の処罰を強化する本法の解釈として、人数の多寡だけでなく、現場での態様や凶器の有無から「多衆の威力」を認定する際の先例となる。実務上は、単なる共犯関係(刑法60条)を超えた集団的威圧の有無が、本法適用の分水嶺となる。
事件番号: 昭和35(あ)397 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二一条に違反しない。 二 刑訴第四〇五条第二号または第三号にいう判例と相反する判断とは、法令の解釈適用について控訴審判決が何らかの判断をした場合においてその法律的判断が判例上の法律的判断と相反する場合をいう。
事件番号: 昭和29(あ)715 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力行為等処罰に関する法律1条1項後段に規定される「数人共同シテ」の意義は、「二人以上共同して」を意味すると解するのが相当である。 第1 事案の概要:被告人らが暴力行為等処罰に関する法律違反等の罪で起訴された事案において、弁護人は同法1条1項後段の「数人共同シテ」の要件について、その「数人」の意義…
事件番号: 昭和38(あ)1208 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
いやしくも被告人が団体または多衆の威力を示して、刑法第二二二条の脅迫罪を犯した以上、たとえ、その団体または多衆が合法的な集団であつても、なお、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項の適用を免れない(昭和二四年(れ)第一六二二号同二八年六月一七日大法廷判決、刑集七巻六号一二八九頁参照)。
事件番号: 昭和30(あ)2439 / 裁判年月日: 昭和33年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力行為等処罰に関する法律1条1項の罪が成立する場合、刑法60条の共同正犯の規定を重ねて適用しなくても、同法条の適用のみで処罰することが可能である。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cの3名は、暴力行為等処罰に関する法律違反の罪で起訴された。第一審判決は、被告人らの所為について同法1条1項を適用し…