いやしくも被告人が団体または多衆の威力を示して、刑法第二二二条の脅迫罪を犯した以上、たとえ、その団体または多衆が合法的な集団であつても、なお、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項の適用を免れない(昭和二四年(れ)第一六二二号同二八年六月一七日大法廷判決、刑集七巻六号一二八九頁参照)。
合法的な集団である団体または多衆の威力を示して刑法第二二二条の脅迫罪を犯した場合と暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項の適用。
刑法222条,暴力行為等処罰ニ関スル法律1条1項
判旨
暴力行為等処罰に関する法律1条1項の適用において、示された「団体」または「多衆」の威力が、たとえ合法的な集団によるものであっても、同条の構成要件を充足する限り、同法の適用を免れない。
問題の所在(論点)
暴力行為等処罰に関する法律1条1項にいう「団体又は多衆の威力を示して」という要件について、当該団体等が「合法的」な集団である場合に同法の適用が排除されるか、また、同法の適用が憲法21条1項に違反しないか。
規範
刑法222条の脅迫罪を犯すに際し、団体または多衆の威力を示したのであれば、その集団自体の性質が合法的なものであるか否かを問わず、暴力行為等処罰に関する法律1条1項が適用される。
重要事実
被告人が、団体または多衆の威力を示して他者に対し刑法222条に該当する脅迫行為を行った。被告人側は、当該集団が合法的なものであることを理由に、加重処罰を規定する暴力行為等処罰に関する法律の適用を争い、憲法21条1項(表現・結社の自由)違反等を主張して上告した。
事件番号: 昭和35(あ)397 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二一条に違反しない。 二 刑訴第四〇五条第二号または第三号にいう判例と相反する判断とは、法令の解釈適用について控訴審判決が何らかの判断をした場合においてその法律的判断が判例上の法律的判断と相反する場合をいう。
あてはめ
暴力行為等処罰に関する法律の趣旨は、集団的威力を背景とした犯罪の強い害悪を抑止することにある。本件において、被告人が実際に「団体または多衆の威力」を背景に脅迫罪を犯した事実が認められる以上、その集団が形式的に合法的であっても、実態として示された威力の違法性は否定されない。したがって、合法的な集団の活動であることを理由に同法の適用を免れることはできず、同法の適用を肯定した原判決に憲法違反の瑕疵はない。
結論
合法的な集団であっても、その威力を示して脅迫等を行えば暴力行為等処罰に関する法律1条1項が適用される。本件上告は棄却される。
実務上の射程
集団的犯罪に関する加重規定の適用範囲を画する判例である。答案上は、労働組合や市民団体による活動であっても、その実態が「威力」の示威に至れば本法の射程に含まれることを論証する際に用いる。結社の自由との調整については、正当な活動範囲を逸脱した暴力性を強調することで、本法の合憲性を担保する構成をとる。
事件番号: 昭和38(あ)1052 / 裁判年月日: 昭和40年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項ただし書の「暴力の行使」に該当するか否かは、当該行為が社会通念上許容される限度を超えるものであるか否かによって判断される。社会通念上の限度を超えると認められる場合は、刑法上の正当行為(同法35条)としての違法性阻却を認めない。 第1 事案の概要:被告人らの原判示所為(具体的な事案…
事件番号: 昭和38(あ)2188 / 裁判年月日: 昭和40年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合活動の一環として行われた行為であっても、暴行罪や脅迫罪等の刑法上の構成要件に該当する暴力的な態様を伴う場合には、労働組合法1条2項の正当行為として刑法35条による違法性阻却は認められない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合活動の一環として特定の行為に及んだが、その態様が刑法上の暴行罪…
事件番号: 昭和38(あ)2299 / 裁判年月日: 昭和39年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基本権(憲法28条)の保障は無制限ではなく、争議行為がその正当な範囲を逸脱する場合には、刑罰法規等の適用が免れることはない。 第1 事案の概要:被告人ら(労働組合員ら14名)は、労働争議の過程において特定の行為(詳細は判決文からは不明だが、一審判決が認定した事実に基づく)を行った。一審判決およ…
事件番号: 昭和39(あ)744 / 裁判年月日: 昭和39年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条の保障は無制限ではなく、勤労争議において使用者側の自由意思を剥奪し、または極度に抑圧するような暴力的な行為は正当な団体行動権の行使とは認められない。団体交渉において刑法上の暴行罪等に該当する行為が行われた場合、労働組合法1条2項による刑事罰の免責(刑法35条の適用)は受けられない。 第1…