一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二一条に違反しない。 二 刑訴第四〇五条第二号または第三号にいう判例と相反する判断とは、法令の解釈適用について控訴審判決が何らかの判断をした場合においてその法律的判断が判例上の法律的判断と相反する場合をいう。
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の合憲性 二 刑訴法第四〇五条第二号または第三号にいう「判例と相反する判断」の意義
暴力行為等処罰に関する法律1条1項,憲法21条,刑訴法405条2号,刑訴法405条3号
判旨
憲法28条が保障する団体行動権や21条の表現の自由も無制限ではなく、暴力行為等処罰法1条1項が多衆の威力を示した暴行等を加重処罰することは、正当な範囲を超える違法な暴力行使を抑制する公共の福祉に基づく合理的な制限として合憲である。
問題の所在(論点)
労働争議や言論活動の一環として行われた多衆による暴行行為に対し、暴力行為等処罰法1条1項を適用して加重処罰することが、憲法28条(団体行動権)および21条(表現の自由)に違反しないか。
規範
憲法28条の団体行動権や21条の表現の自由といえども、公共の福祉による制約を受け、一定の限界を有する。正当な権利行使の範囲内であれば処罰の対象とならないが、団体や多衆の威力を示して行われる暴行・脅迫等は、個人で行われる場合よりも社会への影響が大きく、公共の福祉を害し道義的に責められるべきものである。したがって、暴力行為等処罰法1条1項がこのような行為を重く処罰することは、合理的な根拠があり、憲法21条・28条に違反しない。また、同条の適用は団体成立の目的や行動の動機の如何によって制限されない。
重要事実
被告人3名は、労働争議に際し、他の労働組合員20〜30名とともに気勢を上げ、多衆の威力を示して共同し、暴行(刑法208条)を加えた。これにより、暴力行為等処罰に関する法律1条1項違反として起訴された。被告人側は、本件行為が労働組合活動や表現活動として行われたものであるから、同法を適用して処罰することは憲法21条および28条に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和38(あ)1208 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
いやしくも被告人が団体または多衆の威力を示して、刑法第二二二条の脅迫罪を犯した以上、たとえ、その団体または多衆が合法的な集団であつても、なお、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項の適用を免れない(昭和二四年(れ)第一六二二号同二八年六月一七日大法廷判決、刑集七巻六号一二八九頁参照)。
あてはめ
被告人らの行為は、たとえ勤労者の団体行動権の行使や言論・表現としてなされた側面があったとしても、多衆の威力を示して暴行に及ぶという態様のものである。このような暴力的な手段を伴う行為は、公共の福祉を害し、憲法が保障する自由の限界を逸脱した「正当な権利行使」とは認められない。暴処法1条1項は、団体行動の正当な行使自体を処罰するものではなく、その限界を超えた悪質な態様の暴行を重く処罰する合理的な規定であるため、本件への適用は正当である。また、団体成立の目的が労働争議という社会的なものであっても、その適用は妨げられない。
結論
本件各行為に対して暴力行為等処罰法1条1項を適用し処断することは、憲法21条および28条に違反しない。
実務上の射程
労働争議等における「暴力の非合憲性」を確認する射程を持つ。答案上は、憲法28条の「正当な争議行為」の限界画定、あるいは憲法21条の「表現の自由の限界」として暴力的な態様が含まれる場合に、刑事罰の合憲性を基礎づける論拠として活用できる。
事件番号: 昭和40(あ)1840 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条が保障する団体行動の刑事免責は、正当な限界を超えないものに限り認められるものであり、暴力が行使された場合には正当性を欠くため、暴力行為等処罰法等の刑事罰の適用を受ける。 第1 事案の概要:被告人らは労働組合員として使用者側と団体交渉を行っていた際、使用者側が交渉を打ち切ろうとしたことに憤…
事件番号: 昭和31(あ)3054 / 裁判年月日: 昭和32年4月25日 / 結論: 棄却
被告人らが株式会社Aと争議中、同会社の組合員数十名とともにスクラムを組んで甲外四名の同会社の女子従業員(いずれも非組合員)をとりかこみ、労働歌を高唱し、ワツシヨ、ワツシヨと掛声をかけて気勢をあげながら、約二〇分間にわたり右同従業員等に対し、押す、体当りするなどの行動を続ける所為は、憲法第二八条の保障する団体行動権の行使…
事件番号: 昭和35(あ)861 / 裁判年月日: 昭和39年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条の団体行動権の保障は無制限ではなく、使用者に対する団体交渉において刑法上の暴行罪等に当たる行為が行われた場合には、正当な業務行為として刑事責任を免れることはできない。 第1 事案の概要:被告人らは、使用者との団体交渉において、刑法上の暴行罪等に該当する行為に及んだ。被告人らは、これらの行…
事件番号: 昭和31(あ)1660 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
本件行為当時の情況上被告人に他の行為を期待することができない旨の主張があつた場合に、単に暴力行為等処罰に関する法律違反、暴行の有罪事実を認定することは、間接的にも期待可能性なるものの存否につき判断を示したものとは認められない。