判旨
憲法28条が保障する団体行動の刑事免責は、正当な限界を超えないものに限り認められるものであり、暴力が行使された場合には正当性を欠くため、暴力行為等処罰法等の刑事罰の適用を受ける。
問題の所在(論点)
団体交渉の際に行われた暴行について、憲法28条が保障する団体行動権に基づき刑事免責が認められるか。また、暴力行為等処罰法の適用が憲法28条に違反しないか。
規範
憲法28条は勤労者の団体交渉その他の団体行動を保障し、その正当な範囲内であれば刑事免責が認められる。しかし、団体行動としての正当な限界を超えた場合、特に暴力が行使されたときは刑事免責の対象とならず、刑罰法令の適用を受ける。また、公共企業体等の労使関係における団体交渉であっても、通常の労使関係と異なる特別な配慮がなされる根拠はなく、暴力の行使は正当化されない。
重要事実
被告人らは労働組合員として使用者側と団体交渉を行っていた際、使用者側が交渉を打ち切ろうとしたことに憤慨した。被告人らは約20名の組合員とともに、交渉の継続を求めて多衆の威力を示し、相手方の体を手拳で突く、腕をねじ上げる、あるいは強く体当たりをするなどの暴行を加えた。この行為に対し、暴力行為等処罰ニ関スル法律が適用され、起訴された。
あてはめ
被告人らの行為は、約20名という多衆の威力を示しながら、相手方の身体に対して直接的な物理力を行使したものである。このような「暴力の行使」は、たとえ団体交渉を続行させるための措置であったとしても、社会的に相当な範囲を逸脱している。また、当局側の態度に批判されるべき点があったとしても、暴力による解決は正当な団体行動の限界を明らかに超えている。したがって、本件行為は正当な団体行動とは認められず、刑事免責は享受できない。
結論
被告人らの行為は憲法28条による保障の範囲外であり、暴力行為等処罰法を適用して処罰することは同条に違反しない。
事件番号: 昭和39(あ)2374 / 裁判年月日: 昭和40年7月30日 / 結論: 棄却
団体交渉権にもとづく行為についても、暴力行為等処罰ニ関スル法律の適用があるものと解すべきである。(昭和二四年(れ)第八九八号同二九年四月七日大法廷判決、刑集八巻四号四一五頁参照)
実務上の射程
労働事件において、争議行為や団体交渉に伴う実力行使がなされた際の刑事免責の限界を画する射程を持つ。答案上は、正当性の判断において「暴力の行使」がある場合には、目的の正当性や手段の相当性を論じるまでもなく正当性を欠くとする論理展開で活用する。また、公労法(現公労使法)下でも一般の労使関係と同様の基準が維持される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和35(あ)397 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
一 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項は、憲法第二一条に違反しない。 二 刑訴第四〇五条第二号または第三号にいう判例と相反する判断とは、法令の解釈適用について控訴審判決が何らかの判断をした場合においてその法律的判断が判例上の法律的判断と相反する場合をいう。
事件番号: 昭和43(あ)15 / 裁判年月日: 昭和43年10月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による団体行動であっても、暴力の行使を伴う行為については、憲法28条が保障する正当な団体行動の範囲を逸脱し、違法性が阻却されない。 第1 事案の概要:被告人両名を含む労働組合員らが、労働争議に関連する活動の過程において、暴力の行使を伴う所為(本件所為)に及んだ。被告人らは、かかる行為が憲法…
事件番号: 昭和38(あ)1052 / 裁判年月日: 昭和40年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項ただし書の「暴力の行使」に該当するか否かは、当該行為が社会通念上許容される限度を超えるものであるか否かによって判断される。社会通念上の限度を超えると認められる場合は、刑法上の正当行為(同法35条)としての違法性阻却を認めない。 第1 事案の概要:被告人らの原判示所為(具体的な事案…
事件番号: 昭和25(あ)481 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合による団体交渉等の行為であっても、正当な目的の限度を逸脱した暴力行為は、労働組合法1条2項の趣旨に照らし、憲法28条の保障を受ける正当な行為とは認められない。したがって、かかる行為に対して暴力行為等処罰に関する法律を適用することは憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人らは労働組合員ま…