団体交渉権にもとづく行為についても、暴力行為等処罰ニ関スル法律の適用があるものと解すべきである。(昭和二四年(れ)第八九八号同二九年四月七日大法廷判決、刑集八巻四号四一五頁参照)
団体交渉権にもとづく行為と「暴力行為等処罰ニ関スル法律」。
憲法28条,暴力行為等処罰ニ関スル法律1条1項
判旨
団体交渉の再開を図る目的であっても、使用者側への暴行や器物損壊を伴う行為は憲法28条の保障の範囲外であり、暴力行為等処罰法が適用される。
問題の所在(論点)
団体交渉の再開を求める目的で行われた集団的な怒号や足踏み、器物損壊を伴う行為について、憲法28条の団体交渉権の保障が及ぶか、および暴力行為等処罰法1条1項(刑法208条、261条)が適用されるか。
規範
憲法28条の団体交渉権の行使であっても、他人の身体に対する不法な攻撃(暴行)や不法な器物損壊を伴う場合は、正当な権利行使の範囲を逸脱し、暴力行為等処罰法を含む刑罰法令の適用を免れない。
重要事実
被告人ら十数名は、使用者側との団体交渉再開を求める際、約30分間にわたり対象者2名を取り囲み、至近距離で呼笛に合わせ「団交、開け」と怒号しながら、土足で床や木製テーブルの上で足踏みを続けた。これにより対象者は肉体的・精神的に強い衝撃と疲労を覚え、さらにテーブルの上板の一部が剥がされるに至った。
事件番号: 昭和40(あ)1840 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条が保障する団体行動の刑事免責は、正当な限界を超えないものに限り認められるものであり、暴力が行使された場合には正当性を欠くため、暴力行為等処罰法等の刑事罰の適用を受ける。 第1 事案の概要:被告人らは労働組合員として使用者側と団体交渉を行っていた際、使用者側が交渉を打ち切ろうとしたことに憤…
あてはめ
十数名で取り囲み、至近距離で怒号を浴びせながら激しい足踏みを続ける行為は、対象者に強い肉体的・精神的衝撃を与えるものであり、人の身体に対する「不法な攻撃」といえる。また、足踏みによりテーブルの一部を損壊した行為は「不法な器物損壊」に当たる。これらの暴力的態様は、憲法が保障する正当な団体交渉権の行使とは認められず、暴力行為等処罰法1条1項の構成要件を充足する。
結論
被告人らの行為は憲法28条の保障する権利行使に該当せず、暴力行為等処罰法1条1項により処罰される。上告棄却。
実務上の射程
労働運動の正当性の限界を画する判例である。特に身体への直接的な接触がなくとも、至近距離での怒号や足踏みによる心理的圧迫が「暴行」に該当し得ること、および目的が正当であっても手段が暴力的であれば正当性を失うことを示す際に引用すべきである。
事件番号: 昭和39(あ)744 / 裁判年月日: 昭和39年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条の保障は無制限ではなく、勤労争議において使用者側の自由意思を剥奪し、または極度に抑圧するような暴力的な行為は正当な団体行動権の行使とは認められない。団体交渉において刑法上の暴行罪等に該当する行為が行われた場合、労働組合法1条2項による刑事罰の免責(刑法35条の適用)は受けられない。 第1…
事件番号: 昭和31(あ)1660 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
本件行為当時の情況上被告人に他の行為を期待することができない旨の主張があつた場合に、単に暴力行為等処罰に関する法律違反、暴行の有罪事実を認定することは、間接的にも期待可能性なるものの存否につき判断を示したものとは認められない。
事件番号: 昭和35(あ)861 / 裁判年月日: 昭和39年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法28条の団体行動権の保障は無制限ではなく、使用者に対する団体交渉において刑法上の暴行罪等に当たる行為が行われた場合には、正当な業務行為として刑事責任を免れることはできない。 第1 事案の概要:被告人らは、使用者との団体交渉において、刑法上の暴行罪等に該当する行為に及んだ。被告人らは、これらの行…
事件番号: 昭和39(あ)1000 / 裁判年月日: 昭和40年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃金未払問題に関して説明を求める団体行動であっても、その手段が社会通念上許容される限度を超えた場合には、団体行動権の正当な行使として刑法35条の正当業務行為とは認められない。 第1 事案の概要:被告人らは、勤務先の賃金未払問題に関し、担当のD課長に対して説明を求めた。その際、被告人Cが「一丁もんで…