判旨
暴力行為等処罰に関する法律1条1項の罪が成立する場合、刑法60条の共同正犯の規定を重ねて適用しなくても、同法条の適用のみで処罰することが可能である。
問題の所在(論点)
数人が共同して暴行等の罪を犯し、暴力行為等処罰に関する法律1条1項が適用される場合において、別途刑法60条を適用しなければならないか。
規範
暴力行為等処罰に関する法律1条1項は、団体若しくは多衆の威力を示し、団体若しくは多衆を背景として、又は兇器を示し若しくは数人共同して、刑法上の暴行、脅迫、器物損壊の罪を犯した者を加重処罰する規定である。同条項が適用される場合、その構成要件自体に「共同」の要素が含まれているため、刑法60条を重畳的に適用せずとも、同条項のみに基づいて有罪とすることが妨げられない。
重要事実
被告人A、B、Cの3名は、暴力行為等処罰に関する法律違反の罪で起訴された。第一審判決は、被告人らの所為について同法1条1項を適用したが、刑法60条(共同正犯)は適用しなかった。被告人側は、刑法60条の適用がないことや量刑不当などを理由に上告した。
あてはめ
原審が維持した第一審判決は、被告人らの所為について暴力行為等処罰に関する法律1条1項を適用している。同条項は、数人共同して暴行等の罪を犯すことを処罰の要件としているから、被告人らの行為がこれに該当すると認定される以上、刑法60条を適用しなかったとしても判決の結果に影響を及ぼすものではない。したがって、同法条のみによる処断は正当であるといえる。
結論
暴力行為等処罰に関する法律1条1項の罪については、刑法60条を適用せずとも同条項のみで処断することができ、原判決の判断は正当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(れ)1648 / 裁判年月日: 昭和26年3月13日 / 結論: 棄却
原判示第二の事実によれば、被告人A、Bら一〇名に近い町方青年が、仲間の者を殴つたのは誰かなどと叫び、吊つてある蚊帳を切り落しなどしたうえ、Cを殴打したのであるし、また同第四の事実によれば、被告人Bら一〇名に近い者が、町方青年側として参集し、Dほか二名に対し出刃庖丁を出して指を切れなどとせまり、かつ右Dを殴打したのである…
特別法に「共同して」という構成要件が含まれる場合、刑法総則の共同正犯規定(60条)を適用しなくとも処罰が可能であることを示す。実務上、訴因や適用罪名において同法1条1項のみが掲げられている場合の適法性を裏付ける根拠となる。
事件番号: 昭和29(あ)715 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力行為等処罰に関する法律1条1項後段に規定される「数人共同シテ」の意義は、「二人以上共同して」を意味すると解するのが相当である。 第1 事案の概要:被告人らが暴力行為等処罰に関する法律違反等の罪で起訴された事案において、弁護人は同法1条1項後段の「数人共同シテ」の要件について、その「数人」の意義…
事件番号: 昭和31(あ)1660 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
本件行為当時の情況上被告人に他の行為を期待することができない旨の主張があつた場合に、単に暴力行為等処罰に関する法律違反、暴行の有罪事実を認定することは、間接的にも期待可能性なるものの存否につき判断を示したものとは認められない。
事件番号: 昭和32(あ)1568 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
暴力行為等処罰に関する法律一条一項の犯罪は、同条項列挙の罪の特別加重犯であるから、多衆の威力を示し又は数人共同して刑法二〇八条の罪を犯し因つて人を傷害した場合は、刑法二〇四条の罪のみが成立し、同法律一条一項の違反罪は成立しないものと解するを相当とする。
事件番号: 昭和28(あ)1404 / 裁判年月日: 昭和28年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴力行為等処罰に関する法律1条1項における「多衆の威力」を示した暴行の成否について、事実認定に基づき多衆の威力の活用が認められる場合には同条が適用される。 第1 事案の概要:被告人両名は、多人数で集合し、その多衆の威力を示す態様によって被害者に対し暴行を加えた。第一審判決はこの事実を認定し、被告人…