判旨
勾留開始から8日という期間は、憲法38条2項及び刑訴法319条1項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」には当たらない。また、自白以外の補強証拠が存在する場合には、それらを総合して事実認定を行うことが許容される。
問題の所在(論点)
勾留開始から8日経過後に作成された自白調書が、憲法38条2項及び刑訴法319条1項の「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」に該当し、証拠能力を否定されるべきか。また、自白以外の証拠の評価はどうあるべきか。
規範
憲法38条2項及び刑事訴訟法319条1項の「不当に長い抑留又は拘禁」とは、不当に長い期間にわたって身体の拘束を継続することをいい、これに当たると判断される場合には、その後の自白は証拠能力を欠く。また、自白のみによる有罪判決の禁止(憲法38条3項、刑訴法319条2項)との関係では、自白以外の客観的証拠を総合して犯罪事実を認定すべきである。
重要事実
被告人は昭和27年2月13日に勾留された。その後、同年同月21日に自白調書が作成された。また、現場から押収された煙草の吸殻2個などの客観的な証拠が収集されていた。被告人側は、当該自白が不当な拘禁後のものであること、及び有罪認定の根拠とすることの不当性を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人の勾留開始は2月13日であり、自白調書が作成されたのはその8日後の21日である。この程度の期間の身体拘束は、大法廷判例(最大判昭23.6.23)の趣旨に照らせば、直ちに「不当に長い抑留又は拘禁」に当たるとはいえない。さらに、事実認定の過程においては、自白のみならず押収された煙草の吸殻2個等の多種多様な客観的証拠が総合されており、自白のみに依拠した認定ではないと評価される。
結論
勾留後8日での自白は不当な拘禁後の自白には当たらず証拠能力を有する。また、自白と他の証拠を総合して認定した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
身体拘束の期間が「不当に長い」か否かの判断基準について、数日程度の勾留期間ではこれに当たらないとする消極的要件の具体例を示すものである。自白の証拠能力争い(特に任意性や拘禁期間)において、否定側のメルクマールとして活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)2010 / 裁判年月日: 昭和31年2月16日 / 結論: 棄却
所論昭和二七年一一月一四日附被告人の検察官に対する供述調書の自白は、一件記録で明らかなように被告人が同年一〇月三〇日裁判官の逮捕状によつて逮捕され、翌一一月一日勾留状の執行により勾留されてから一五日しか経過しない日時になされたものであるから逮捕から自白までの期間、事件の性質等に照し当裁判所大法廷屡次の趣旨に徴し不当に長…