所論昭和二七年一一月一四日附被告人の検察官に対する供述調書の自白は、一件記録で明らかなように被告人が同年一〇月三〇日裁判官の逮捕状によつて逮捕され、翌一一月一日勾留状の執行により勾留されてから一五日しか経過しない日時になされたものであるから逮捕から自白までの期間、事件の性質等に照し当裁判所大法廷屡次の趣旨に徴し不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白とはいえない。
憲法第三八条第二項にいう「不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白」にあたらない一事例
憲法38条2項,刑訴法319条1項
判旨
逮捕・勾留から15日経過後の自白について、事件の性質等に照らし不当に長い拘禁後の自白とはいえず、任意性も認められるため、憲法38条2項等に抵触しない。
問題の所在(論点)
逮捕・勾留から15日という期間経過後になされた自白が、憲法38条2項及び刑訴法319条1項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」に該当し、証拠能力が否定されるか。
規範
自白の証拠能力について、憲法38条2項及び刑訴法319条1項は「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」を排除する。この判断にあたっては、逮捕から自白までの期間のみならず、事件の性質、捜査の状況等の諸事情を総合的に考慮し、身柄拘束の継続が自白の任意性に疑念を生じさせる程度に至っているかを基準とする。
重要事実
被告人は昭和27年10月30日に裁判官の発付した逮捕状により逮捕され、翌11月1日に勾留状が執行された。その15日後である同年11月14日に、検察官に対して犯行を認める供述(本件自白)を行った。弁護人は、この自白が不当に長い拘禁後のものであり、かつ拷問等の不当な働きかけがあったとして証拠能力を争ったが、原審は拷問等の事実を否定した上で自白の任意性を認めていた。
あてはめ
本件における逮捕から自白までの期間は15日間である。この期間は、裁判官の発付した令状に基づく適法な身柄拘束の期間内(勾留延長を含まない初期段階)である。事件の性質や当時の捜査状況を勘案すると、15日という期間は心理的圧迫により自白を強いるような不当な長さとはいえない。また、被告人が主張する拷問の事実は客観的に否定されており、自白の任意性を疑わせる特段の事情は認められない。したがって、本件自白は不当な拘禁によるものとは評価できない。
結論
本件自白は、不当に長く拘禁された後の自白には当たらず、証拠能力を有する。上告棄却。
実務上の射程
適法な勾留期間中(特に延長前)の自白については、期間の長さのみをもって直ちに「不当に長い拘禁」とされることはなく、自白獲得の態様や任意性を総合して判断される。司法試験においては、身柄拘束下での自白の証拠能力(任意性)を論じる際、期間の考慮要素の一つとして本判例の考え方を用いることができる。
事件番号: 昭和26(あ)3343 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長い抑留又は勾禁後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)に該当するか否かは、事実の内容や手続の経過等を総合的に勘案して判断されるべきである。また、自白以外の証拠により犯罪事実を認定し得る場合には、自白のみによる有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が司法警察官に対して行った…