判旨
公判調書における開廷日の記載に誤りがある場合であっても、他の記録から当該記載が明白な誤記であると認められるときは、これを理由に訴訟手続の違法を主張することはできない。
問題の所在(論点)
公判調書における開廷日の記載に誤りがある場合、これが単なる誤記として許容されるか、あるいは訴訟手続の適法性に影響を及ぼす訴訟法違反となるか。
規範
公判調書に記載された日付が、作成日や前後の公判手続の経過、判決原本の作成日、被告人の上告申立書の記載等の他の客観的な記録と照らし合わせ、明白な誤記であると認められる場合には、当該記載の不備のみをもって直ちに訴訟法違反の違法があるということはできない。
重要事実
原審の第7回公判調書において、開廷の日が「4月5日」と記載されていた。しかし、同調書の作成日は4月10日であり、第6回公判調書には判決宣告日を4月10日と指定する旨の記載があった。また、原判決原本の作成日、書記官補による判決宣告日の記載、さらには各被告人が提出した上告申立書における判決言渡日の記載も、いずれも「4月10日」となっていた。
あてはめ
本件では、公判調書の作成日、判決宣告日の指定、判決原本の作成日、さらには被告人自身の上告申立書といった複数の記録において、一貫して判決宣告日が4月10日であることが示されている。第7回公判調書における「4月5日」という記載は、これらの客観的状況から判断して、4月10日の明白な誤記であると断定できる。したがって、当該記載の誤りをもって訴訟手続の重大な違反があるとはいえない。
結論
本件公判調書の記載は明白な誤記であり、訴訟法違反の主張は採用できず、上告は棄却される。
実務上の射程
公判調書の絶対的証明力(刑訴法52条)との関係が問題となるが、明白な誤記については他の資料による訂正・補認が許容されることを示唆している。答案上は、手続の瑕疵が致命的か、あるいは単なる書記的誤謬に過ぎないかを判断する際の考慮要素として、記録の一貫性を引用する際に活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)385 / 裁判年月日: 昭和27年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決における証拠の引用に単純な表示上の誤りがあるとしても、その誤りが記録に照らして明白である場合には、判決の効力に影響を及ぼすような違法とはならない。 第1 事案の概要:被告人が上告した事案において、第一審判決が証拠として引用した検察事務官に対する供述調書の回数につき、本来「第二、三回」と記載すべ…