判旨
可罰的違法性の理論について、たばこ専売法違反における零細な反法行為が犯罪を構成しないとした判例があるものの、窃盗罪においてはその性質上、直ちに適用されるものではない。具体的な事案における違法性の程度を勘案し、窃盗罪の成立を肯定すべきである。
問題の所在(論点)
窃盗罪において、被害が軽微であることを理由に可罰的違法性が否定され、犯罪が不成立となる余地があるか。また、行政取締法規(たばこ専売法)に関する可罰的違法性の判断枠組みを、財産犯である窃盗罪にそのまま適用できるか。
規範
法益侵害の程度が極めて軽微であり、社会的に許容される範囲内にある場合には、構成要件に該当する行為であっても違法性が阻却され、犯罪を構成しない(可罰的違法性の理論)。ただし、この判断は各罪種や具体的な保護法益の性質に応じて慎重になされるべきである。
重要事実
被告人が窃盗罪に問われた事案において、弁護人は「たばこ専売法違反に関する大審院判決(一銭にも満たないような零細な違反行為は犯罪を構成しないとする趣旨)」を引用し、本件窃盗も同様に可罰的違法性を欠くため犯罪を構成しないと主張して上告した。なお、具体的な被害額や窃取物の詳細は判決文からは不明である。
あてはめ
引用された大審院判決は、たばこ専売法違反という行政的取締を目的とする事件に関するものであり、「零細なる反法行為」が犯罪を構成しないとしたものである。しかし、本件は窃盗事件であり、個人の財産権を保護法益とする罪であるため、事案の性質が根本的に異なる。したがって、行政犯における微細な違反の法理を、具体的態様の異なる本件窃盗罪にそのまま適用して違法性を否定することは適切ではない。
結論
本件窃盗行為は、可罰的違法性を欠くものとはいえず、窃盗罪の成立を認めた原判決は妥当である(上告棄却)。
実務上の射程
可罰的違法性の議論において、行政犯(専売法違反等)と刑事犯(窃盗等)を区別した点に意義がある。答案上は、被害が極めて軽微な事案で「違法性阻却(または構成要件該当性排除)」を検討する際、単に被害額の少なさだけでなく、保護法益の種類や行為態様を総合考慮すべき根拠として引用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2691 / 裁判年月日: 昭和28年2月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未遂罪の判決において刑法243条を適用した以上、同法43条を重ねて挙示する必要はなく、また未遂による刑の減軽は裁判所の任意的裁量に属する。 第1 事案の概要:被告人が窃盗に着手したが既遂に至らなかった事案(障害未遂)において、第一審判決は刑法243条(窃盗未遂)を適用して有罪としたが、刑法43条の…