判旨
控訴審判決が第一審判決の認定事実に誤りがないとして破棄自判する場合、改めて証拠の標目を示すことなく、第一審が確定した事実を基礎として法令を適用することは適法である。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審判決を破棄して自ら判決をする(自判)際、証拠の標目を示さずに第一審が認定した事実をそのまま基礎として法令を適用することが、刑事訴訟法上の手続として許容されるか。
規範
控訴審判決において、第一審判決の事実認定に違法がなく適法に確定されたと判断した場合には、判決書において重ねて証拠の標目を示す必要はなく、第一審判決の確定事実を基礎として法令を適用することができる。
重要事実
被告人Aおよび被告人Bに対し、第一審が有罪判決を言い渡した。控訴審(原判決)は、被告人Aについては法令の適用の誤りを、被告人Bについては量刑不当を理由に第一審判決を破棄した。その際、控訴審は第一審が認定した事実に誤りはないと判断し、自ら証拠の標目を示すことなく、第一審の確定事実を引用して刑を言い渡した。
あてはめ
本件において、原判決は第一審の事実認定に違法がないことを前提としている。第一審で適法に確定された事実は、控訴審においても判断の基礎となる資格を有する。したがって、原判決が証拠の標目を改めて列挙しなかったとしても、第一審の認定事実に基づいて法令を適用したことに手続上の違法は認められない。
結論
控訴審が第一審の事実認定を維持したまま自判する場合、証拠の標目を示さず第一審の確定事実を基礎とすることは適法である。
実務上の射程
刑事訴訟法における判決書の記載事項(事実と証拠の対応)に関する実務上の取扱いを明示したものである。控訴審が事実誤認を理由とせずに破棄自判する場合の簡略化された判決書作成様式を正当化する際の根拠となる。
事件番号: 昭和34(あ)2291 / 裁判年月日: 昭和35年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第一審判決の量刑不当を理由に破棄自判する場合、一審の事実認定を維持する限りにおいて、改めて証拠説明を行う必要はない。 第1 事案の概要:被告人Aは恐喝罪に問われ、第一審で有罪判決を受けた。検察官は量刑不当を理由に控訴した。原審(控訴審)は、一審が認定した事実に誤りはないとしつつも、犯行の動…