判旨
控訴審が第1審判決を破棄して自判する場合、第1審判決の認定した事実を基礎として法令を適用することは適法である。また、起訴状に被告人として表示され、公訴事実に共犯者として記載されている者は、釈明による追加ではなく適法に起訴されたものと解される。
問題の所在(論点)
1. 起訴状において被告人の表示および公訴事実の記載がある場合に、釈明による被告人の追加という手続的瑕疵が認められるか。 2. 控訴審が第1審判決を破棄して自判する際、第1審が認定した事実を基礎として法令を適用することの可否。
規範
1. 起訴状の被告人欄に氏名が表示され、かつ公訴事実の冒頭において「被告人等は……」と記載されている場合、当該人物は適法に公訴提起の対象となっていると解される。 2. 控訴審が、事実の確定に影響を及ぼさない事由により第1審判決を破棄して自ら判決(自判)を行う場合、第1審判決が認定した事実をそのまま基礎として法令を適用することは正当である(刑訴法400条但書参照)。
重要事実
被告人Aを含む4名が被告人として起訴状に表示され、公訴事実の冒頭にも「被告人等は……」と記載されていた。第1審判決後、控訴審において事実確定に影響しない理由で第1審判決を破棄し自判が行われたが、その際、第1審が認定した事実を基礎として法令が適用された。これに対し弁護人は、被告人が釈明によって追加されたものである点や、判決書の記載要件に関する不備などを理由として上告した。
あてはめ
1. 本件起訴状には被告人Aを含めて4名の氏名が被告人として明示されており、公訴事実の冒頭にも「被告人等は……」と記載されている。したがって、公判廷における釈明によって被告人を追加した事実は認められず、適法な起訴がなされているといえる。 2. 控訴審における自判において、事実の確定に影響を及ぼさない事由による破棄である以上、既になされた適法な事実認定を引用または基礎として法令を適用することは、判決書の記載要件として合理的であり、判例の趣旨に合致する。
結論
1. 被告人は適法に起訴されており、手続上の違法はない。 2. 控訴審が第1審の認定事実を基礎として法令を適用することは正当であり、破棄自判の手続として適法である。
実務上の射程
控訴審の自判手続(刑訴法400条)における事実適用の簡略化を認める実務上の根拠となる。また、被告人の特定に関する表示(刑訴法256条2項1号)において、被告人欄と公訴事実の記載を総合して判断する姿勢を示している。答案上は、控訴審の自判における事実認定の省略や引用の可否が問われた際に、本判例を根拠に「第1審の事実認定を基礎とすること」を肯定できる。
事件番号: 昭和26(あ)431 / 裁判年月日: 昭和27年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に誤記があっても、その内容が前後関係から明白であり、法定の記載事項が具備されていると認められる場合には、当該判決は有効である。 第1 事案の概要:第一審判決の主文において、被告人及び共犯者Aを指すべき箇所に「被告人両名」との記載があった。被告人側は、これが刑事訴訟規則56条所定の事項に関する…