判旨
控訴審が第一審判決の量刑不当を理由に破棄自判する場合、一審の事実認定を維持する限りにおいて、改めて証拠説明を行う必要はない。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審の事実認定を維持しつつ、量刑不当を理由に破棄自判する場合、判決書において改めて証拠説明を行う必要があるか(刑事訴訟法の判決構成の要否)。
規範
控訴審が第一審判決の事実認定に誤りがないと判断した上で、その量刑が不当であることを理由にこれを破棄自判する場合、証拠説明(証拠の標目や証拠による事実認定の過程の明示)を改めて行う必要はない。第一審判決が確定した事実に法令を適用し、量刑の判断を行えば足りる。
重要事実
被告人Aは恐喝罪に問われ、第一審で有罪判決を受けた。検察官は量刑不当を理由に控訴した。原審(控訴審)は、一審が認定した事実に誤りはないとしつつも、犯行の動機や態様、被告人の社会的地位(博徒集団の背景等)を考慮すると一審の量刑は軽すぎると判断した。原審は、一審の事実認定を詳細にする形で判示し、一審判決を破棄して自らより重い刑を言い渡したが、その際、改めて独自の証拠説明は行わなかった。これに対し被告人側が、証拠説明がない点等を違法として上告した。
あてはめ
本件において原判決は、第一審が認定した事実に反する別個の罪となるべき事実を新たに認定したものではなく、一審の認定事実をより詳細に判示したに止まる。このように事実認定を維持しつつ量刑のみを変更する場合、既に一審判決においてなされた事実認定の基礎となる証拠の裏付けがあることが前提となっている。したがって、確定した事実に対して改めて証拠の説示を加えなくても、法的に不備があるとはいえない。また、被告人の地位(総長等)を考慮したことも、単なる差別ではなく犯行における役割や情状の重さを評価するための合理的な考慮要素であると解される。
結論
控訴審が量刑不当により破棄自判する際、事実認定を維持するならば証拠説明は不要である。本件原判決に訴訟法違反等の上告理由は認められない。
実務上の射程
量刑不当による破棄自判の際の判決書の簡略化を認めた実務上の指針。事実誤認を理由に破棄し、異なる事実を認定する場合(刑訴法397条1項、400条但書)には改めて証拠説明が必要となるため、両者の区別が重要である。答案上は、控訴審の自判手続の適法性を論述する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1924 / 裁判年月日: 昭和30年12月1日 / 結論: 棄却
控訴審が第一審判決の量刑不当の主張を理由ありとしてこれを破棄自判するにあたつては、第一審判決の確定した事実に対し法令の適用を示せば足り、控訴審として改めて事実を認定するを要しない。