判旨
判決書に誤記があっても、その内容が前後関係から明白であり、法定の記載事項が具備されていると認められる場合には、当該判決は有効である。
問題の所在(論点)
判決主文に「被告人両名」という不正確な表現(誤記)がある場合、刑事訴訟規則56条所定の記載事項を欠く違法な判決となるか。
規範
刑事訴訟法及び刑事訴訟規則(規則56条等)が定める判決書の記載事項について、主文等の表現に一部誤記がある場合であっても、判決の全旨に照らしてその内容が明白であり、かつ被告人本人に関する法定事項の記載が存する限り、当該判決に違法はない。
重要事実
第一審判決の主文において、被告人及び共犯者Aを指すべき箇所に「被告人両名」との記載があった。被告人側は、これが刑事訴訟規則56条所定の事項に関する不備であり、判例違反であるとして上告した。
あてはめ
本件における第一審判決の「被告人両名」との記載は、前後の文脈や事案の推移に照らせば「被告人及びA」の誤記であることは明白である。また、被告人本人に関する限り、規則56条が定める氏名・年齢・住所等の記載事項は全て存しており、実質的な不備は存在しないといえる。したがって、単なる表記上の誤記が判決の有効性に影響を及ぼすことはない。
結論
判決主文の誤記が明白であり、法定事項の記載も具備されているため、本件判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の更正制度(刑訴法43条参照)との関連で、形式的な誤記が判決全体の効力や上告理由(刑訴法405条)に直結しないことを示す事例である。実務上は、明らかな誤記を理由とした判決無効の主張を排斥する際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)6666 / 裁判年月日: 昭和29年8月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審判決が第一審判決の認定事実に誤りがないとして破棄自判する場合、改めて証拠の標目を示すことなく、第一審が確定した事実を基礎として法令を適用することは適法である。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bに対し、第一審が有罪判決を言い渡した。控訴審(原判決)は、被告人Aについては法令の適用の誤り…