一 裁判長が被告人に対し旧刑訴第三四七条第二項による告知をしなくても、各個の証拠につき取調を終える毎に被告人に対し意見の有無を尋ねており、最後に弁護人から「他に立証等ない。」と答えている以上、原判決に刑訴第四一一条にあたる事由あるとはいえない。 二 旧刑訴法事件の上告審に於ける審判の特例規則第八条には、法令を掲げれば足りるとあるから想像的競合についていずれに対する法益の侵害が犯情重いかについて説明する必要はない。
一 刑訴第四一一条にあたらない一事例 二 旧刑訴法事件の控訴審及び上告審に於ける審判の特例に関する規則(昭和二五年最高裁判所規則第三〇号)第八号にいわゆる「法令を掲げれば足りる」の適用
旧刑訴法347条2項,旧刑訴法360条1項,刑訴法411条,刑法54条1項前段,刑法10条,旧刑訴事件の上訴審における審判の特例規則8条
判旨
刑事訴訟において検察官が第一審判決書の摘示に従い公訴事実を陳述した場合、裁判長が改めて第一審判決を読み聞かせる必要はなく、公訴事実開示の手続として適法である。また、裁判長が逐次意見を聴取し、弁護人が立証の終了を認めている限り、証拠調べが被告人の防御権を実質的に制限したとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 検察官が第一審判決書の通り公訴事実を陳述した場合に、裁判長による読み聞かせを欠くことが公訴事実開示手続として適法か。2. 裁判長の証拠調べの手順が、被告人の防御権を実質的に制限し、刑訴法411条の破棄事由に該当するか。
規範
公訴事実の陳述手続においては、検察官がその内容を特定して陳述すれば足り、重ねて裁判長が書面を読み聞かせる必要はない。また、訴訟手続の違憲・違法を判断するにあたっては、被告人の防御権が実質的に制限されたか否か、及び手続の全過程において防御の機会が確保されていたかという観点から判断すべきである。
重要事実
被告人が刑事事件で起訴され、控訴審において検察官が第一審判決書の事実摘示に従って公訴事実を陳述した。これに対し弁護人は、裁判長が第一審判決を読み聞かせなかった点、および裁判長による証拠調べが被告人の防御権を不当に制限した点を理由に上告した。記録上、裁判長は証拠調べの都度、被告人に対し意見の有無を確認しており、最終的に弁護人も「他に立証等ない」旨を回答していた。
あてはめ
まず、検察官が第一審判決書を引用する形で公訴事実を陳述している以上、手続の内容は明確であり、裁判長による重ねての読み聞かせは不要である。次に、防御権の制限については、裁判長が証拠調べの各段階で逐次被告人に意見陳述の機会を与えており、かつ弁護人自身が証拠調べの終了を認めている。このような審理経過に照らせば、被告人の防御権が実質的に制限された事実は認められず、著しい不当性はないと解される。
結論
本件の公訴事実開示手続は適法であり、また証拠調べにおいて被告人の防御権が実質的に制限されたとも認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
旧法下の規則(昭和25年最高裁規則30号)に基づく判断を含むが、公判手続における防御権侵害の有無を「実質的な制限の有無」で判断する枠組みは現行法下でも参考となる。公訴事実の陳述において、内容が特定されている限り形式的な読み聞かせの重複を不要とした実務的判断を示すものである。
事件番号: 昭和26(あ)3923 / 裁判年月日: 昭和28年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審の審理方法が刑事訴訟法の精神に副わない不適切な点を含んでいたとしても、その事実のみをもって直ちに審理または判決が違法であると断定することはできない。 第1 事案の概要:被告人が上告し、第一審の審理方法が刑事訴訟法の精神に副わないものである旨を主張した事案。記録上、第一審の審理方法には確かに刑…