第一審判決の採用した証拠が刑訴三二八条の証拠として検察官により提出されたことは認められるが、原審は事実の取調として所論の二証人を含む計一三名の証人と被告人本人を各尋問した上これらの証拠に基いて第一審判決を維持したのであるから、なんら違法を認めることはできない。
綜合認定した証拠の一部に刑訴三二八条により提出したに過ぎない証拠があつても、判決に影響を及ぼさない一事例
刑訴法328条,刑訴法393条,刑訴法317条
判旨
原審において主張も判断もされていない事項や、単なる法令違反・事実誤認の主張は、適法な上告理由に当たらない。また、控訴審において事実の取調べが行われ、その証拠に基づいて第一審判決が維持されたのであれば、手続に違法はない。
問題の所在(論点)
原審で主張・判断されていない事項や、単なる法令違反・事実誤認の主張が、適法な上告理由(刑訴法405条等)にあたるか。また、控訴審において改めて証拠調べが行われた上で第一審判決が維持された場合に、証拠提出経緯の瑕疵等を理由とする破棄自判の必要があるか。
規範
上告審において適法な上告理由となるのは、憲法違反や判例違反等(刑訴法405条)に限られ、原審で主張・判断されていない事項や、単なる法令違反、事実誤認の主張はこれに含まれない。また、刑訴法411条(上告審の職権による判決の破棄)を適用すべき事由が認められない限り、原判決は維持される。
重要事実
弁護人が、第一審判決の採用した証拠の提出経緯に問題がある旨を主張して上告した事案。しかし、当該事項は原審(控訴審)において主張も判断もされておらず、内容も単なる法令違反又は事実誤認の主張に留まるものであった。原審は、事実の取調べとして、弁護人が指摘する証人を含む計13名の証人および被告人本人を尋問した上で、それらの証拠に基づき第一審判決を維持していた。
あてはめ
本件の上告理由は、原審で争点化されていない事項であり、かつ実質的に単なる法令違反や事実誤認をいうものであるから、適法な上告理由の要件を欠く。また、原審においては計13名の証人尋問等、十分な事実の取調べが実施されており、その結果得られた証拠群に基づいて第一審の判断を妥当と認めている。したがって、証拠提出の経緯に一部所論のような点があったとしても、判決に影響を及ぼすべき重大な違法(刑訴法411条)は存在しないと判断される。
結論
本件上告は適法な上告理由を欠き、かつ職権破棄すべき事由も認められないため、棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法における上告理由の制限(405条)と、上告審の職権破棄事由(411条)の適用限界を示す事例である。答案上は、控訴審を経た上告審において、事実誤認や単なる手続違背を主張することの困難さを説明する際に参照し得る。
事件番号: 昭和25(れ)1508 / 裁判年月日: 昭和26年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認および量刑不当の主張は、いずれも刑事訴訟法上、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を提起した事案である。弁護人は、第一点において原判決には事実誤認がある旨を主張し、第二点において原判決の量刑が不当である旨を主張した。 第2 問題の所在(論点):刑事訴…