強姦未遂の際において加えられた暴行であつても検察官が単純なる暴行として起訴し、処罰したのは検察官も所論原判示二、三の行為については強姦の手段としての暴行と迄は認めなかつたのであり、裁判所もこれに従つたものと見なければならない。
強姦未遂の際に加えられた暴行を単純暴行と認定した一事例
刑法177条,刑法179条,形法208条
判旨
親告罪である強姦未遂の告訴がある場合、検察官がその手段たる暴行のみを独立の暴行罪として公訴提起することは、検察官が強姦の手段としての暴行とは認めなかった限りにおいて適法である。
問題の所在(論点)
強姦未遂罪という親告罪の告訴がある状況において、その手段である暴行のみを非親告罪である暴行罪として起訴することが、親告罪の告訴制度の趣旨に反し違法とならないか。
規範
親告罪につき告訴がある場合、または告訴がなくとも検察官が当該犯罪の構成要件を充足する程度に至らないと判断した場合には、その一部の行為を非親告罪として起訴することは妨げられない。もっとも、親告罪の構成要件を隠蔽する目的で、告訴のない親告罪に含まれる暴行等のみを抽出して起訴することは許されない。
重要事実
被告人が強姦未遂の疑いで告訴された事案において、検察官は強姦未遂ではなく、その過程で行われた一部の行為を単純な暴行罪として公訴を提起した。なお、強姦未遂の告訴については、公訴提起後に取り下げがなされていた。
あてはめ
本件では強姦未遂の告訴が存在しており、公訴提起後の取下げは無効であるため、客観的には強姦未遂として処罰可能な状態にあった。しかし、検察官は被告人の行為を強姦の手段としての暴行とは認めず、単純な暴行として起訴している。裁判所もこの検察官の判断に従い、暴行罪の成立を認めたものである。これは、告訴がないのに強姦の構成要件たる暴行だけを起訴する違法なケースとは異なり、検察官の裁量の範囲内といえる。
結論
本件の公訴提起及び処罰は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
親告罪と非親告罪が重畳する場合の検察官の起訴裁量を認める。答案上は、一罪の一部を分割して起訴することの可否(訴因選択の自由)や、親告罪の告訴の効力が及ぶ範囲、及び親告罪制度の潜脱(告訴のない強姦を暴行で起訴することの是非)を論じる際の基準として活用できる。
事件番号: 昭和37(あ)399 / 裁判年月日: 昭和37年6月26日 / 結論: 棄却
強姦未遂の被害者の法定代理人は告訴権の抛棄をすることはできず、従つて右被害者の検察官に対する告訴は有効であるとする原判示は相当である。