強姦未遂の被害者の法定代理人は告訴権の抛棄をすることはできず、従つて右被害者の検察官に対する告訴は有効であるとする原判示は相当である。
告訴権の抛棄。
刑法177条,刑法179条,刑法180条,刑訴法230条,刑訴法231条,刑訴法237条
判旨
親告罪における被害者の法定代理人は、告訴権を放棄することができない。したがって、事前に告訴をしない旨の意思表示があったとしても、その後になされた告訴は有効である。
問題の所在(論点)
親告罪において、被害者の法定代理人は告訴権をあらかじめ放棄することができるか。告訴権放棄の可否と、その後になされた告訴の有効性が問題となる。
規範
親告罪の被害者の法定代理人が有する告訴権は、その性質上、事前に放棄することができない。したがって、法定代理人が一度告訴しない旨の意思表示をしたとしても、告訴期間内であれば、有効に告訴を提起することができる。
重要事実
被告人が親告罪に該当する罪を犯した事案において、被害者の法定代理人が、当初は検察官等に対して告訴を行わない旨の意思表示をしていた(告訴権の放棄をうかがわせる行為があった)。しかし、その後心変わりし、改めて検察官に対して告訴を提起した。被告人側は、一度なされた告訴権の放棄は有効であり、その後の告訴は不適法であると主張して、公訴棄却を求めた。
あてはめ
告訴権は公法上の権利であり、かつ親告罪における告訴は訴訟条件の一つである。被害者の法定代理人が有するこの権利は、本人の利益を保護するために法律上付与された独立の権限であり、私的自治の原則が及ぶ私権とは性質を異にする。本件において、法定代理人が検察官に対し告訴権を放棄する旨の態度を示していたとしても、法的に告訴権を消滅させる効果は認められない。したがって、その後に法定代理人が行った告訴は、有効な告訴として受理されるべきである。
結論
被害者の法定代理人は告訴権を放棄することはできず、その告訴は有効である。
実務上の射程
被害者本人の告訴権放棄については議論があるが、本判決は「法定代理人」の告訴権については明確に放棄を否定した。答案上は、告訴の取消し(刑訴法237条)とは別に、告訴提起前の「放棄」が問題となった場合に本判例を引用し、訴訟条件の具備を肯定する論理として用いる。
事件番号: 昭和22(れ)50 / 裁判年月日: 昭和22年11月24日 / 結論: 棄却
被害者が檢事に對し「告訴はしません」という語句を使用しても、その陳述全體の趣旨が犯罪事實を申告するとともに犯人の處罰を望むものであるときは、親告罪の告訴として有効である。
事件番号: 昭和28(あ)4321 / 裁判年月日: 昭和29年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親告罪において、被害者が未成年者である場合、その法定代理人は独立して告訴権を行使することができる(刑事訴訟法231条1項)。本件では被害者の父による告訴が有効であり、訴訟条件を欠くものではない。 第1 事案の概要:被告人が親告罪に該当する罪を犯したとされる事案において、昭和27年2月20日、被害者…