判旨
判決における犯罪の日時、場所等の事実に多少の誤りがあっても、被告人の防御に実質的な不利益を与えず、判決の結果に影響を及ぼさない場合には、刑訴法411条による破棄事由には当たらない。
問題の所在(論点)
判決書において認定された犯罪事実のうち、場所の表示に誤りがある場合に、刑訴法411条(判決に影響を及ぼすべき著しい事実の誤認)として破棄すべき事由に該当するか。
規範
判決に事実の誤認がある場合であっても、それが単なる細部の相違にとどまり、事案の同一性を揺るがすものではなく、かつ判決の結果に影響を及ぼすことが明らかでない限り、上告裁判所による職権破棄(刑訴法411条)をすべき事由には該当しない。
重要事実
被告人Bが麻薬を所持した場所について、第一審判決は横浜市内の「b町c番地」の飲食店A方であると認定した。しかし、実際には同区内の「d町eノf番地」の飲食店A方であったという場所的認定の誤りが存在した。
あてはめ
本件における場所の誤りは、同じ区内の同一の飲食店(飲食店A)を指している中での番地表記の齟齬にすぎない。このような認定の誤りは、犯罪の成否や量刑の基礎となる重要な事実の根幹を揺るがすものではなく、適法な手続によって得られた証拠に照らしても、所持の事実自体は否定されない。したがって、著しい事実誤認があるとはいえず、判決の結論を左右するものではないと評価される。
結論
本件の場所認定の誤りは刑訴法411条の破棄事由には当たらず、上告は棄却される。
実務上の射程
訴因変更が必要な事実の齟齬と、判決での事実認定の誤りを区別する視点を与える。被告人の防御権を侵害しない程度の些末な認定違いであれば、上告審での破棄を要しないという判断指針として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)39 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状に記載された罰条が誤りであっても、訴因として明示された事実が判決で認定された事実と同一であれば、被告人の防御に実質的な不利益を及ぼさない限り、公訴提起の効力に影響せず、不告不理の原則には反しない。 第1 事案の概要:本件の起訴状には、罪名や罰条の記載について所論の誤りがあったものの、訴因とし…