判旨
起訴状に記載された罰条が誤りであっても、訴因として明示された事実が判決で認定された事実と同一であれば、被告人の防御に実質的な不利益を及ぼさない限り、公訴提起の効力に影響せず、不告不理の原則には反しない。
問題の所在(論点)
起訴状に記載された罰条が誤っている場合において、裁判所が記載された罰条とは異なる、訴因事実に合致した罪名・罰条を適用して判決を下すことが、「審判の請求を受けない事件について判決をした」ものとして違法となるか(刑事訴訟法256条および不告不理の原則の限界)。
規範
起訴状に記載された罰条に誤りがある場合であっても、それが単なる記載の誤りにとどまり、かつ、被告人の防御に実質的な不利益を及ぼすものでないときは、公訴提起の効力を左右するものではなく、当該罰条に対応する事実を審理・判決しても審判の請求を受けない事件について判決した違法(刑事訴訟法378条3号参照)には当たらない。
重要事実
本件の起訴状には、罪名や罰条の記載について所論の誤りがあったものの、訴因として具体的に明示された事実関係は、第一審および原審が適法に認定・判示した事実と全く同一であった。被告人はこの訴因に基づいて審理を受けていた。
あてはめ
本件において、起訴状に記載された訴因としての事実は、裁判所が認定した事実と完全に一致している。したがって、罰条の記載は単なる誤記と認められる。このような場合、被告人は訴因として示された事実に対して防御の機会を与えられており、罰条の誤りによって防御に実質的な不利益が生じたとは認められない。ゆえに、公訴提起の効力に影響はなく、裁判所が正しい罰条を適用して判決を出すことは適法である。
結論
罰条の誤記が被告人の防御に実質的不利益を及ぼさない限り、原判決に不告不理の原則違反の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
訴因の特定と罰条の役割に関する判断基準を示す。訴因(事実)が特定されており、罰条の誤記が防御権を侵害しない程度のものであれば、起訴状変更等の手続を経ずとも裁判所は正しい罰条を適用できるという実務上の処理を肯定するものである。
事件番号: 昭和27(あ)5544 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決における犯罪の日時、場所等の事実に多少の誤りがあっても、被告人の防御に実質的な不利益を与えず、判決の結果に影響を及ぼさない場合には、刑訴法411条による破棄事由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Bが麻薬を所持した場所について、第一審判決は横浜市内の「b町c番地」の飲食店A方であると認定…