判旨
憲法31条の適正手続違反を主張していても、その実質が第一審判決の認定しない事実を前提として犯罪の不成立を主張するものである場合には、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない。
問題の所在(論点)
憲法31条違反を形式的に主張する場合であっても、その実質が事実誤認の主張にすぎない場合に、刑訴法405条所定の上告理由として認められるか。また、原審で主張しなかった事項を上告審で新たに主張できるか。
規範
憲法31条違反の主張が、単に第一審の認定した事実と異なる事実を前提とし、その前提事実に基づけば罪が成立しないと主張するにすぎない場合は、適法な上告理由(刑訴法405条)を構成しない。また、原審で主張せず原判決も判断していない事項については、原則として上告理由とすることはできない。
重要事実
被告人は麻薬取締法違反の罪に問われ、第一審で有罪判決を受けた。これに対し弁護人は、憲法31条の適正手続の保障に違反する旨を主張して上告したが、その内容は第一審が認定していない事実を前提として、被告人の行為は同法に違反しないと主張するものであった。また、自白の強要があった旨も主張されたが、原審(二審)では主張されておらず、原判決もそれについて判断していなかった。
あてはめ
弁護人の主張は憲法違反を名目としているが、その実体は第一審が認定した事実を争い、独自の事実認識に基づいて無罪を主張するものである。これは実質的に事実誤認の主張であって、憲法31条の解釈を直接争うものではない。さらに、自白強要の主張についても、原審において全く提出されておらず、原判決の判断に瑕疵を認める根拠となり得ない。記録を精査しても、刑訴法411条を適用して職権で判決を破棄すべき顕著な事由も認められない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらず、また職権破棄の事由も認められないため、棄却される。
事件番号: 昭和26(あ)3490 / 裁判年月日: 昭和27年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する前提となる事実が認められない場合には、刑事訴訟法405条に定める適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、憲法違反を理由として最高裁判所に対し上告を申し立てた事案。しかし、判決文によれば、当該憲法違反の主張の前提となる事実自体が認められない状況であった。 第2 問…
実務上の射程
実務上、憲法違反を上告理由とする際は、単なる事実認定の不当性を争うのではなく、法規範そのものの憲法適合性や手続の憲法違反性を具体的に特定しなければならない。事実誤認を憲法問題にすり替えても上告理由として適法性を欠くと判断されるリスクを示す事例である。
事件番号: 昭和26(あ)4194 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告について、事実誤認や量刑不当の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、違憲の主張についても、先例の趣旨に照らし、憲法違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、その主張内容は事実誤認および量刑不当であった。また、弁護人からも憲法違反を理由とする上告がなさ…