判旨
極めて微量な事実の誤認があったとしても、それが判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められない場合には、上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
判決に影響を及ぼすべき事実誤認の程度と、刑訴法411条に基づく職権破棄の必要性の判断基準が問題となる。
規範
刑事訴訟法第411条(判決の破棄)の適用において、事実誤認が存在する場合であっても、その誤認が極めて微量であり、判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる事由に当たらないときは、原判決を維持すべきである。
重要事実
被告人が塩酸ヂアセチルモルヒネ4包(計0.95g)を犯罪組成物件として所持等していた事案において、原判決は0.01gの1包を当該4包の残量の一部であると認定した。弁護側はこの認定に誤認があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、仮に0.01gという極めて微量な塩酸ヂアセチルモルヒネの帰属について原判決に誤認があったとしても、全体の犯罪組成物件(0.95g)の量や事案の性質に照らせば、その誤差は僅少である。このような微細な事由は、判決を破棄しなければ著しく正義に反するといえるほどの重大な瑕疵(刑訴法411条3号)には該当しないと解される。
結論
本件上告は棄却される。微量の事実誤認は、正義に反するほどの重大な事由とは認められない。
実務上の射程
事実誤認を理由とした上告審における職権破棄の限定性を示す。実務上、些末な数量的誤差や構成要素の一部に関する誤認があっても、結論に実質的な影響を及ぼさない場合は、適法な上告理由にならず、職権破棄もなされないという論理で活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5544 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決における犯罪の日時、場所等の事実に多少の誤りがあっても、被告人の防御に実質的な不利益を与えず、判決の結果に影響を及ぼさない場合には、刑訴法411条による破棄事由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Bが麻薬を所持した場所について、第一審判決は横浜市内の「b町c番地」の飲食店A方であると認定…