第一審判決認定の五個の麻薬取締法違反罪((一)モルヒネを含有する注射液等(一cc入)二十数管の譲り受け、(二)ないし(四)塩酸モルヒネ等一五瓦の各譲り渡し、(五)パパベリンを含有するツシドリン末三、八瓦の所持)の併合罪中、右ツシドリン末三、八瓦の所持の犯罪は新麻薬取締法(昭和二八年法律第一四号)第二条、同附則第二項、第一六項により刑の廃止があつたこと明らかであるが、これを是認した原判決並びに第一審判決中の有罪部分を破棄しなくとも著しく正義に反するものとは認められない。
刑訴第四一一条にあたらない事例
刑訴法411条5号,麻薬取締法(昭和28年法律第14号)2条1号,麻薬取締法(昭和28年法律第14号)2条2号附則2項,麻薬取締法(昭和28年法律第14号)2条2号附則16項
判旨
数個の併合罪のうち一部の罪について刑の廃止があった場合でも、その罪が全体の中で僅少な部分に留まり、原判決を維持しても著しく正義に反すると認められないときは、刑訴法411条による破棄を要しない。
問題の所在(論点)
併合罪として処断された数罪のうち、一部の罪について原判決後に刑の廃止があった場合、刑訴法411条に基づき必ず判決を破棄しなければならないか。
規範
刑訴法411条は上告裁判所による職権破棄を認めるが、事後審の性格上、原判決後の法令改廃等があった場合でも、判決を破棄しなければ「著しく正義に反すると認められる」ときに限って破棄すべきである。併合罪の一部について刑の廃止があった場合、その罪の軽重や全体に占める割合に照らし、原判決を維持することが正義に反するか否かで決する。
重要事実
被告人は、モルヒネ含有注射液の譲り受け(1罪)、塩酸モルヒネ等の譲り渡し(3罪)、及びパパベリン含有のツシドリン末3.8gの所持(1罪)の計5個の麻薬取締法違反の併合罪として第一審・控訴審で有罪とされた。しかし、原判決後に麻薬取締法が改正され、上記のうち「ツシドリン末3.8gの所持」については刑の廃止があったことが明らかとなった。
あてはめ
本件で刑の廃止があったのは、5個の併合罪のうち「ツシドリン末3.8gの所持」という1つの罪にすぎない。他の4罪(注射液20数管の譲り受け、塩酸モルヒネ15gの譲り渡し等)と比較して、当該所持罪は犯罪事実全体の中で限定的な一部である。このような場合、一部に刑の廃止があったことを考慮しても、なお原判決の有罪部分を維持することが「著しく正義に反する」事態には該当しないと評価される。
結論
被告人の併合罪の一部に刑の廃止があっても、著しく正義に反すると認められない限り、刑訴法411条を適用して原判決を破棄する必要はない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
併合罪の一罪についてのみ破棄事由がある場合の処理基準を示す。司法試験では刑訴法411条の「著しく正義に反する」の解釈において、一部の無罪・刑の廃止が全体の量刑や事実認定に与える影響の軽微性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)2982 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて微量な事実の誤認があったとしても、それが判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められない場合には、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が塩酸ヂアセチルモルヒネ4包(計0.95g)を犯罪組成物件として所持等していた事案において、原判決は0.01gの1包を当該4包の残量の一部…
事件番号: 昭和28(あ)966 / 裁判年月日: 昭和29年11月9日 / 結論: 棄却
控訴審においては量刑不当の主張判断があつたに止まるときは、上告審において地裁が第一審判決における法令の適用が最高裁判所の判例と相反する判断をしたとの論旨は、刑訴第四〇五条第二号に当らない。