控訴審においては量刑不当の主張判断があつたに止まるときは、上告審において地裁が第一審判決における法令の適用が最高裁判所の判例と相反する判断をしたとの論旨は、刑訴第四〇五条第二号に当らない。
地方裁判所が第一審としてした判決が、最高裁判所の判例と相反する判断をしたという論旨は刑訴法第四〇五条第二号に当るか
刑訴法405条2号
判旨
麻薬の窃取とその後の所持が理論上処断上の一罪となる場合であっても、併合罪として処断された結果が処断刑の範囲に影響せず、判決主文を左右しないのであれば、刑訴法411条により判決を取り消すべき事由には当たらない。
問題の所在(論点)
麻薬を窃取した者が引き続き当該麻薬を所持した場合の罪数関係、および本来一罪とされるべき罪を併合罪として処断した誤りが刑訴法411条の職権取消事由に該当するか。
規範
麻薬の窃取罪とその後の所持罪が本来一罪(吸収関係等)とされるべき場合に、これらを併合罪(刑法45条前段)として認定した誤りがあったとしても、それが処断刑の範囲に影響を及ぼさず、判決の主文に影響がないと認められるときは、刑訴法411条の職権取消事由には該当しない。
重要事実
被告人は、窃盗の事実(判示第一)および麻薬の窃取とそれに続く麻薬取締法違反の所持の事実(判示第二)により起訴された。第一審判決はこれらを併合罪として処断し、控訴審もこれを維持した。弁護人は、麻薬の窃取とその後の所持は処断上の一罪であるにもかかわらず併合罪とした点は判例違反であり、判決に影響を及ぼす法令違反があると主張して上告した。
事件番号: 昭和25(あ)998 / 裁判年月日: 昭和26年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して職権で原判決を破棄すべき事由も認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が、原判決に対し最高裁判所へ上告を申し立てた事案である。上告趣意書が提出されたが、その具体的な内容は本決定文…
あてはめ
仮に弁護人が主張するように、麻薬の窃取とその後の所持が処断上の一罪となるべき場合であったとしても、本件では窃盗罪の刑に併合加重をした範囲で処断されており、処断刑の枠組み自体に変動はない。したがって、併合罪として扱ったことが処断刑の具体的な範囲や量刑の結論、すなわち判決の主文に影響を及ぼしているとは認められない。
結論
併合罪として処断した点に仮に誤りがあったとしても、処断刑の範囲および主文に影響がない以上、上告棄却を免れない。
実務上の射程
罪数判断の誤りがあったとしても、それが実質的に被告人の不利益(処断刑の上限・下限の変化)に繋がらない場合には、上告審での救済対象とならないことを示す。実務上、不可罰的事後行為や吸収関係の論述において、結論への影響の有無を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和26(あ)2207 / 裁判年月日: 昭和29年1月14日 / 結論: 棄却
麻薬の譲受とその譲受けた麻薬の所持が、仮りに、所論のごとく、法律上牽連一罪であるとしても、本件では譲受行為が二回あり、且つ譲受行為が千葉市であり、その譲受けた麻薬が東京都内に運搬され、しかも、譲受けた被告人以外の他の被告人も参加して同都内において所持されたものであるから、譲受行為とは別に独立した所持行為があつたものとも…