判旨
刑事訴訟法392条2項の規定は、控訴審に対し同条項所定の事由に関して職権調査の義務を課したものではない。また、証拠調べ前に被告人に対してなされる質問は、直ちに違法となるものではない。
問題の所在(論点)
1. 刑事訴訟法392条2項は、控訴審に対し、同条項に掲げる事由について職権で調査すべき義務を課しているか。 2. 証拠調べの実施前に被告人に対して質問を行うことは、適正手続に反し違法となるか。
規範
1. 刑事訴訟法392条2項の職権調査義務の存否:同条項は控訴審に対し、所定の事由(377条〜382条および383条)について職権で調査することを「得」る旨を定めたものであり、一律に調査の義務を課したものではない。 2. 証拠調べ前の被告人質問の許容性:証拠調べ前に裁判所が被告人に対して行う質問は、被告人の供述を求める手続として、直ちに憲法31条や刑事訴訟法に違反する違法なものとはいえない。
重要事実
被告人A、B、Cらは第一審の判決に対し、事実誤認、量刑不当、法令違反等を理由に上告した。被告人Cの弁護人は、控訴審が職権調査義務(刑訴法392条2項)を怠った点や、第一審において証拠調べ前に被告人に対する質問がなされたことが憲法31条および刑事訴訟法に違反すると主張した。また、判決書における日付の誤記についても指摘があった。
あてはめ
1. 職権調査義務について:判例(昭和26年3月27日決定等)によれば、刑訴法392条2項は職権による調査の「権限」を付与したに留まり、義務を課したものではない。したがって、控訴審がこれを行わなかったとしても直ちに違法とはならない。 2. 証拠調べ前の質問について:大法廷判決(昭和25年12月20日)の趣旨に照らし、所論のような証拠調べ前の質問がなされたとしても、それが直ちに黙秘権の侵害や適正手続違反に繋がるものではない。 3. 日付の誤記について:第一審判決の「12月27日」という記載は、起訴後の日付となり矛盾するため「10月27日」の誤記であることは明白であり、手続上の重大な瑕疵にはあたらない。
結論
1. 刑事訴訟法392条2項は職権調査の義務を課したものではない。 2. 証拠調べ前の被告人に対する質問は違法ではない。したがって、本件上告はいずれも棄却される。
実務上の射程
控訴審の構造(事後審的性格)を論じる際、裁判所の職権調査の範囲が裁量的であることを示す根拠として活用できる。また、被告人質問の時期に関する手続的正当性を検討する際の基礎的な先例となる。
事件番号: 昭和27(あ)782 / 裁判年月日: 昭和28年7月14日 / 結論: 棄却
論旨は、本件記録添附の控訴趣意書を援用するというのであるが、上告趣意書自体にその趣意内容を示さず記録中の他の書面を援用するに過ぎないものは適法な上告趣意といえない(昭和二五年(あ)一二二〇号同年一〇月一二日当裁判所第一小法廷決定参照)。
事件番号: 昭和25(あ)872 / 裁判年月日: 昭和27年6月6日 / 結論: 棄却
刑訴三九二条一項にいわゆる調査を公開の法廷で為すべきものとした規定は存しない。