刑訴第三九二条二項が控訴審に職権調査の義務を課さなかつたといつて、憲法第一三条、第七六条第三項に違反しない。
刑訴法第三九二条第二項の合憲性
刑訴法392条,憲法13条,憲法76条3項
判旨
控訴審において職権調査義務を課さない刑事訴訟法392条2項は、裁判官の良心や審級制度に関する憲法の規定に違反しない。裁判の審級制度や職権調査の範囲は、立法府が諸般の事情を勘案して決定すべき立法政策上の問題である。
問題の所在(論点)
控訴審において、裁判所に控訴趣意書以外の事項に関する職権調査義務を課していない刑事訴訟法392条2項は、憲法13条(個人の尊重)や76条3項(裁判官の職権行使の独立と良心)に違反し、違憲といえるか。
規範
憲法76条3項の「良心」とは、裁判官が外部の圧迫や誘惑に屈せず自己の内心と道徳感に従うことを指す。また、裁判の審級制度や裁判所の権限、職権調査の範囲などは、憲法81条以外の場合は法律をもって適当に定めうる立法政策上の問題であり、特段の制限がない限り立法府の裁量に委ねられている。
重要事実
被告人が刑事裁判の控訴審において、控訴趣意書に包含されない事項について職権調査が行われなかったことを不服とし、控訴審に職権調査の義務を課していない刑事訴訟法392条2項が憲法13条および76条3項に違反すると主張して上告した事案。
あてはめ
現行の刑事訴訟法上、控訴審は事後審として位置づけられており、控訴趣意書に含まれる事項の調査義務はあるが、それ以外の事項は職権による調査が可能であるにとどまる。このような職権調査の範囲や上告理由の限定は、立法府が決定すべき事項である。本件において、刑事訴訟法392条2項が職権調査を義務化していないことは、裁判官の内心の自由や道徳感を侵害するものではなく、裁判官の独立を規定した憲法76条3項等に反するとはいえない。また、職権による判決破棄を認める同法411条の仕組みも違憲ではない。
結論
刑事訴訟法392条2項は憲法に違反しない。したがって、控訴審が職権調査を行わなかったことに違法はなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法における事後審構造の合憲性を支える重要判例である。司法試験においては、審級制度の立法裁量や、裁判官の独立(良心)の意義を論じる際の論拠として使用できる。特に、事後審における職権調査の不実施が直ちに裁判を受ける権利や適正手続に反しないことを説明する文脈で有用である。
事件番号: 昭和30(あ)662 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
刑訴三九二条二項は職権で調査することができる旨を定めたものであつて職権調査義務を定めたものではない。
事件番号: 昭和25(あ)872 / 裁判年月日: 昭和27年6月6日 / 結論: 棄却
刑訴三九二条一項にいわゆる調査を公開の法廷で為すべきものとした規定は存しない。