判旨
食糧管理法に基づく小麦粉の移動禁止措置が省令の改正により解除されたとしても、それは単なる事実上の変更にすぎず、刑訴法405条2号及び刑法6条にいう「刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
行政上の規制変更(移動禁止の解除)が、刑事訴訟法405条2号および刑法6条に規定される「刑の廃止」に該当するか。
規範
法令の改廃により罰則が廃止されたのではなく、単に規制対象となっていた事実関係(特定の物資の移動制限等)が行政上の事情の変化により変更・解除されたにすぎない場合は、これを「刑の廃止」と解することはできない。
重要事実
被告人は小麦粉を無許可で輸送したとして、食糧管理法違反で起訴された。しかし、原判決後の昭和27年6月1日、農林運輸省令の改正によって小麦粉の移動禁止が解除された。これを受けて、弁護人は本件が刑訴法405条2号の「判決後の刑の廃止」に該当し、免訴されるべき事由があるとして上告した。
あてはめ
最高裁は、小麦粉の移動禁止が省令改正により解かれた事実は認めた。しかし、この規制緩和は政策的・行政的な必要性に基づく事実上の変更であって、刑罰規定そのものが「反省的考慮」により廃止されたものではない。したがって、既存の判例を踏襲し、本件のような規制解除は「刑の廃止」には当たらないと判断した。井上裁判官らの少数意見はこれを免訴事由とすべきとしたが、多数意見はこれを採用しなかった。
結論
本件規制解除は「刑の廃止」に当たらない。したがって、原判決後に免訴事由が生じたとはいえず、上告を棄却する。
実務上の射程
「限時法」や「事実の変更」の理論に関する典型判例である。法律そのものの廃止ではなく、委任命令(省令)による具体的規制の解除にとどまる場合、原則として「刑の廃止」には当たらない(処罰が維持される)という構成を答案で示す際に用いる。
事件番号: 昭和27(あ)4235 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法施行規則の改正により特定の食糧が移動禁止の対象から除外され、統制が事実上廃止されたとしても、改正前に成立した輸送罪の刑が廃止されたものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法および同施行規則に基づき、主要食糧である小麦(裸玄麦)を無許可で輸送したとして起訴された。しかし、第一…
事件番号: 昭和27(あ)2936 / 裁判年月日: 昭和29年2月2日 / 結論: 棄却
従来主要食糧であつた小麦が食糧管理法施行規則にいわゆる主要食糧から除外されても、既にその前に成立した主要食糧(小麦)輸送罪に対する刑が廃止されたものということはできない。