従来主要食糧であつた小麦が食糧管理法施行規則にいわゆる主要食糧から除外されても、既にその前に成立した主要食糧(小麦)輸送罪に対する刑が廃止されたものということはできない。
小麦が主要食糧から除外されたことによつて既に成立した主要食糧(小麦)輸送罪に対する刑罰は廃止されたか
食糧管理法31条,食糧管理法9条,食糧管理法施行令11条,食糧管理法施行規則29条(昭和25年9月改正前のもの),刑訴法337条2号,昭和27年5月31日農林運輸省令2号47条改正部分
判旨
犯罪後の法令改正により当該行為が禁止対象から除外された場合であっても、それが単なる事実上の変更にすぎないときは、刑法6条の「刑の廃止」には当たらない。
問題の所在(論点)
犯罪後の法令改正により、それまで処罰対象であった行為が禁止対象から除外された場合、刑法6条の「刑の廃止」があったものとして免訴(刑訴法337条2号)とすべきか。
規範
刑法6条および刑事訴訟法337条2号にいう「刑の廃止」とは、当該行為を処罰すること自体が不当であるとの反省的考慮に基づく法理的見解の変更による場合を指す。これに対し、特定の物資の需給状況の変化など、単なる時勢の変遷に伴う事実上の変更により禁止が解かれたにすぎない場合は、これに当たらない。
重要事実
被告人は食糧管理法に基づき主要食糧として移動が禁止されていた小麦を輸送した。しかし、判決前に食糧管理法施行規則が改正され、小麦の移動禁止が解かれるとともに、小麦が同規則の主要食糧から除外された。弁護人は、これが「刑の廃止」に当たるとして免訴を主張した。
あてはめ
本件における小麦の移動禁止の解除は、当時の食糧事情や経済状況といった社会的事実の変化に対応するための政策的措置である。これは食糧管理という目的を達成するための手段の変更であって、当該行為を処罰すること自体が不当であるとの反省的・法理的判断に基づくものではない。したがって、法理的見解の変更とは認められず、依然として処罰の必要性は失われないと評価される。
結論
小麦の移動禁止解除は「刑の廃止」には当たらず、被告人を免訴とすることはできない。原判決の有罪判断を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
いわゆる「限時法」や、行政上の規制変更に伴う罰則の適用の可否を判断する際のリーディングケースである。答案では、単なる政策的・事実上の変更か、それとも処罰自体を不当とする反省的変更かを区別する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和27(あ)4235 / 裁判年月日: 昭和29年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法施行規則の改正により特定の食糧が移動禁止の対象から除外され、統制が事実上廃止されたとしても、改正前に成立した輸送罪の刑が廃止されたものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は食糧管理法および同施行規則に基づき、主要食糧である小麦(裸玄麦)を無許可で輸送したとして起訴された。しかし、第一…
事件番号: 昭和27(あ)5227 / 裁判年月日: 昭和29年5月14日 / 結論: 棄却
食糧管理法施行規則(昭和二三年四月一七日農林省令第三四号による改正直後のもの)第二三条で禁止されていた小麦の所有者がその所有する小麦を政府その他農林大臣の指定する者以外の者に売り渡す行為が、その後小麦が同条の「米麦等」のうちから除外されたからといつて、右禁止されていた当時の右規則第二三条違反の罪については刑の廃止があつ…