食糧管理法施行規則(昭和二三年四月一七日農林省令第三四号による改正直後のもの)第二三条で禁止されていた小麦の所有者がその所有する小麦を政府その他農林大臣の指定する者以外の者に売り渡す行為が、その後小麦が同条の「米麦等」のうちから除外されたからといつて、右禁止されていた当時の右規則第二三条違反の罪については刑の廃止があつたものとはいえない。
小麦の売渡制限の解除は既に成立した小麦所有者のその小麦不正売渡の罪に対する刑の廃止となるか
食糧管理法9条1項,食糧管理法31条,食糧管理法施行令(昭和24年6月25日政令第226号による改正前)8条,食糧管理法施行規則(昭和23年4月17日農林省令第34号による改正直後の)23条,食糧管理法規則(昭和27年5月31日農林・運輸省令第二号による改正直後の)39条,刑訴法337条
判旨
食糧管理法施行規則の改正により小麦の売渡し禁止が解除されたとしても、それは単なる事実上の変更にすぎず、改正前に成立した違反行為に対する「刑の廃止」(刑法6条、刑訴法402条等)には当たらない。
問題の所在(論点)
行為当時に罰則の根拠となっていた行政規則が改正され、当該行為が禁止対象から除外された場合、刑法6条や刑事訴訟法上の「刑の廃止」に該当するか。
規範
法令の改廃により処罰規定が廃止された場合(刑の廃止)は免訴となるが、その改廃が、特定の行為を禁止していた規制が事情の変更により不要となったという事実上の変更にとどまる場合には、従前の違法行為に対する可罰性は維持され、刑の廃止には該当しない。
重要事実
被告人らは、食糧管理法および同施行規則に基づき小麦の売渡しが禁止されていた時期に、指定外の者に小麦を売り渡したとして起訴された。しかし、原審判決後の昭和27年6月1日に施行規則が改正され、小麦の売渡し制限が撤廃されたため、弁護人は「刑の廃止」があったとして免訴を主張した。
あてはめ
本件における施行規則の改正は、米麦等の流通状況の変化という事実上の事情に基づき、小麦の売渡しを禁止する必要がなくなったために行われたものである。これは物価統制令違反に関する判例の趣旨に照らせば、単なる事実上の変更にすぎず、小麦の自由売買が解禁されたからといって、既に成立していた不正売渡し罪の可罰性を否定するものではない。したがって、行為時の法令を適用して処罰することは妨げられない。
結論
施行規則の改正は「刑の廃止」に当たらないため、改正前の行為については引き続き処罰可能であるとして、被告人の上告を棄却した。
実務上の射程
いわゆる限時法や行政刑法における「法律の変更」と「事実の変更」の区別に関する重要判例。事実上の変更説(法律の変更であっても、その動機が事実上の事情に基づく場合は刑の廃止ではないとする説)を維持する文脈で引用する。
事件番号: 昭和27(あ)2897 / 裁判年月日: 昭和29年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法令の改廃により対象物が規制から除外されたとしても、それが単なる事実上の変更にすぎない場合は、刑法6条及び刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、食糧管理法施行規則に基づき主要食糧として規制されていた玄小麦を、許可なく輸送委託した罪で起訴された。しかし、判…
事件番号: 昭和27(あ)2936 / 裁判年月日: 昭和29年2月2日 / 結論: 棄却
従来主要食糧であつた小麦が食糧管理法施行規則にいわゆる主要食糧から除外されても、既にその前に成立した主要食糧(小麦)輸送罪に対する刑が廃止されたものということはできない。