判旨
食糧管理法施行規則の改正により特定の食糧が移動禁止の対象から除外され、統制が事実上廃止されたとしても、改正前に成立した輸送罪の刑が廃止されたものとはいえない。
問題の所在(論点)
食糧管理法施行規則の改正により、特定の食糧(小麦)の移動禁止が解除されたことが、刑法6条および刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」に該当するか。特に、事実上の状況変化に伴う規制の変更が、過去の行為の処罰に影響を及ぼすかが問題となる。
規範
法令の改廃が、単に事実上の変更(いわゆる時機的な必要性に基づく事情の変化)に基づくものであり、特定の行為に対する刑法的評価自体を廃止したものでない場合には、刑法6条(および刑訴法337条2号)にいう「刑の廃止」には当たらない。したがって、行為時の法令が適用され、処罰は維持される。
重要事実
被告人は食糧管理法および同施行規則に基づき、主要食糧である小麦(裸玄麦)を無許可で輸送したとして起訴された。しかし、第一審判決後、昭和27年5月31日の省令改正(食糧管理法施行規則の改正)により、小麦の移動禁止が解かれ、小麦に関する統制が事実上廃止された。被告人側は、これが「犯行後の刑の廃止」に当たるとして、免訴(または無罪)を主張して上告した。
あてはめ
最高裁の従来の判例の趣旨に照らせば、食糧管理法施行規則において小麦が「主要食糧」から除外されたとしても、それは食糧事情等の変化に伴う事実上の統制廃止にすぎない。このような事実上の変更は、当該行為自体の反社会性が否定され刑法的に処罰の必要がなくなったという「法律上の見解の変更」ではない。したがって、禁止が解除される前に成立した主要食糧輸送罪については、刑の廃止があったものと解することはできず、依然として処罰の対象となる。
結論
本件省令改正は「刑の廃止」に当たらない。したがって、上告を棄却し、行為時の法令に基づき被告人を処罰した原判決を維持する。
実務上の射程
限時法や行政規制を伴う処罰規定において、事情の変化(事実上の変更)に伴い規制が緩和された場合に、過去の違反行為を免訴すべきかという問題(「法律上の見解の変更」か「事実上の変更」かの区別)に適用される。答案上は、本判決の立場が、政策的な必要性から生じた規制変更については処罰を維持するものであることを指摘し、刑法6条の解釈として用いる。
事件番号: 昭和27(あ)5301 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法に基づく小麦粉の移動禁止措置が省令の改正により解除されたとしても、それは単なる事実上の変更にすぎず、刑訴法405条2号及び刑法6条にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は小麦粉を無許可で輸送したとして、食糧管理法違反で起訴された。しかし、原判決後の昭和27年6月1日…
事件番号: 昭和27(あ)5227 / 裁判年月日: 昭和29年5月14日 / 結論: 棄却
食糧管理法施行規則(昭和二三年四月一七日農林省令第三四号による改正直後のもの)第二三条で禁止されていた小麦の所有者がその所有する小麦を政府その他農林大臣の指定する者以外の者に売り渡す行為が、その後小麦が同条の「米麦等」のうちから除外されたからといつて、右禁止されていた当時の右規則第二三条違反の罪については刑の廃止があつ…