判旨
任意性に疑いのある自白は証拠能力を欠くが、被告人及び弁護人が同意し、かつ記録上任意にされたものでないと疑うべき理由がない場合には、証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
被告人及び弁護人が同意した自白調書について、任意性に疑いがあるとして証拠能力を否定すべきか。自白の任意性と証拠同意(刑訴法326条)の関係が問題となる。
規範
憲法38条2項及び刑訴法319条1項の趣旨に鑑み、自白は、それが拷問、脅迫、強制、不当に長い拘禁、あるいはその他任意にされたものでない疑いがある場合には、証拠とすることができない。もっとも、被告人及び弁護人が証拠とすることに同意し、かつ記録上その供述が任意になされたものでないと疑うべき特段の理由が見いだし得ない場合には、その証拠能力が認められる。
重要事実
被告人が司法警察員に対して行った各供述(自白調書及び上申書)について、弁護人は取調官による暴行、強制、誘導に基づいたものであると主張し、その証拠能力を争った。しかし、第一審の公判調書によれば、被告人及びその弁護人は、当該自白調書等について証拠とすることに同意していた。また、記録を精査しても、具体的に暴行や強制が行われたことを裏付ける証拠は認められなかった。
あてはめ
本件において、被告人および弁護人は第一審第九回公判において自白調書等の証拠採用に同意している。弁護側は取調における暴行等を主張するが、記録上これを裏付ける事実は存在せず、供述が任意になされたものでないと疑うべき理由は見当たらない。したがって、同意がある以上、その証拠能力を否定する理由はなく、証拠として採用することは適法であるといえる。
結論
本件自白調書等の証拠採用は適法であり、原判決に違憲または違法な点は認められない。上告棄却。
実務上の射程
自白の任意性(刑訴法319条1項)が争われる事案において、被告人の同意(326条)があったとしても、裁判所はなお職権で任意性を調査すべきであるが、任意性を疑う具体的資料がない場合には同意を重視して証拠能力を認める実務の運用を追認したものといえる。答案上は、自白の証拠能力の前提として任意性の調査が必要であることを論じる際に、同意の有無との関連で言及しうる。
事件番号: 昭和26(れ)2239 / 裁判年月日: 昭和27年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみで有罪とすることは憲法38条3項及び刑訴法319条1項により禁じられるが、自白以外の補強証拠が存在し、かつ自白の任意性が認められる場合には、有罪判決の基礎とすることができる。 第1 事案の概要:被告人両名(うち1名はA)に対し、一審及び二審において有罪判決が下された。被告人側は、当…