判旨
司法警察員及び検察官に対する自白について、誘導、脅迫、強要があったとする主張は、記録上その証跡が認められない限り、単なる事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
被告人が捜査段階での自白について「誘導、脅迫、強要されたものである」と主張する場合、それが刑訴法405条の定める適法な上告理由に該当するか、あるいは単なる事実誤認の主張にとどまるか。
規範
自白の任意性に疑いがある(刑訴法319条1項)との主張がなされた場合であっても、記録を精査して誘導、脅迫、強要等の事実を認めるに足りる証跡が存しないときは、当該主張は刑事訴訟法405条所定の適法な上告理由(憲法違反または判例違反)を構成せず、実質的には事実誤認の主張に属する。
重要事実
被告人は、司法警察員及び検察官に対して自白をしたが、上告審において当該自白は誘導、脅迫、強要されたものであると主張し、その証拠能力ないし証明力を争った。また、弁護人は量刑不当を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件記録を精査しても、被告人が主張するような誘導、脅迫、強要があったと認めるべき証跡は見当たらない。したがって、自白の任意性を争う被告人の主張は、その前提となる事実関係を争うものに帰着するため、刑訴法405条が規定する憲法違反や判例違反の事由には該当せず、事実誤認の主張であると解される。また、弁護人が主張する量刑不当も同条の上告理由には当たらない。
結論
本件上告は刑訴法405条の適法な上告理由を欠くため、刑訴法408条により棄却される。
実務上の射程
自白の任意性に関する主張であっても、具体的根拠を欠く事実争いに終始する場合は、上告理由として適法に受理されないことを示している。答案作成上は、自白の証拠能力が争点となる事案で、客観的な記録上の裏付けが任意性の判断を左右することを強調する際の補助的論拠となり得る。
事件番号: 昭和47(あ)1867 / 裁判年月日: 昭和48年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が任意になされたものであるとする原審の判断が相当である以上、憲法38条1項及び2項違反の主張は前提を欠き、不適法な上告理由にとどまる。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、被告人の自白が任意性に欠けるものであるとして、憲法38条1項(自己負罪拒否特権)及び同条2項(自白排除法則)違反、…