判旨
憲法32条の裁判を受ける権利は、国民が法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を保障し、裁判所以外の機関による裁判を禁ずる趣旨である。また、被告人の自白を補強する証拠として、公判調書における証人の供述記載を用いることは適法である。
問題の所在(論点)
1. 原判決の判断過程に瑕疵がある場合、直ちに破棄理由となるか。2. 憲法32条が保障する「裁判を受ける権利」の本質的意義。3. 公判調書における証人の供述は、被告人の自白に対する補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)として適格か。
規範
1. 憲法32条は、すべて国民が憲法又は法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を有し、裁判所以外の機関によって裁判されないことを保障する。2. 被告人の自白のみで有罪とすることはできないが(憲法38条3項)、公判調書等に含まれる他人の供述は、自白の真実性を担保する補強証拠となり得る。
重要事実
被告人は刑事事件の事実(判決文上、具体的な罪名は不明)について起訴された。第一審および原審において、被告人本人の自白のほかに、共犯者または関係者と思われるA、Bの各供述調書の記載、および第一審公判における証人Cの供述記載が証拠として掲げられ、有罪判決が下された。被告人側は、原判決の判断遺脱や憲法32条(裁判を受ける権利)違反、および自白の補強証拠の欠如を理由として上告した。
あてはめ
1. 原審が自ら判決(自判)を行う際、その内容自体に違法がないのであれば、第一審の判断遺脱を論難することは破棄理由とはならない。2. 本件において被告人は法律に定められた裁判所による審判を受けており、憲法32条の保障(裁判所以外の機関による裁判の禁止)は侵害されていない。3. 証拠関係を検討すると、被告人の自白以外に証人Cの公判供述が存在する。この供述は独立した証拠価値を有し、自白の真実性を補強するに足りるため、補強証拠を欠くという主張は前提を欠く。
結論
憲法32条違反および自白の補強証拠欠如の主張は理由がなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
自白の補強証拠の必要性と、裁判を受ける権利の定義を確認した判例である。答案上では、補強証拠の適格性(公判供述が補強証拠になり得ること)を論じる際の根拠として活用できる。憲法32条の意義については、行政罰やADRとの関係で「司法権へのアクセス」が問題となる文脈での基礎的な定義として引用可能である。
事件番号: 昭和26(あ)2531 / 裁判年月日: 昭和27年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみに基づいて有罪とすることはできないが、自白以外の証人供述や証拠書類等が補強証拠として存在する場合、憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が自白に基づき有罪判決を受けた事案において、弁護人が「自白の任意性に疑いがある」および「自白のみを唯一の証拠として事実認定がなされ…
事件番号: 昭和28(あ)862 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人が同意した証拠については証拠能力が認められ、被告人が主張する証人尋問の申し立てが記録上確認できない以上、憲法37条2項の証人尋問権侵害の主張は前提を欠く。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が特定の証拠を証拠とすることに同意した。その後、弁護人は証人尋問の申し立てを行ったことを前提として、原判…