判旨
物価統制令違反の行為後に価格指定告示が廃止されたとしても、刑法6条にいう「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合には当たらない。また、行為時に有罪であったものが裁判時の法令により処罰されない状態になっても、憲法39条に違反するものではない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反の行為後、裁判までの間に統制額を指定した告示が廃止された場合、刑法6条の「刑の廃止」に該当し免訴とされるべきか。また、行為後に処罰規定が実質的に消滅した者を処罰することが憲法39条に違反しないか。
規範
物価統制令に基づく価格指定告示が廃止されたとしても、それは単なる経済事情の変遷等に伴う事実上の変更にすぎず、犯罪後の法令により刑が廃止されたものとは解さない。また、憲法39条前段の「既に無罪とされた行為」とは、一度確定判決により無罪とされた行為を指し、行為後の法改正等によって裁判時に無罪となるべき場合を含むものではない。
重要事実
被告人は、小麦粉について当時の物価統制令3条に基づき指定されていた統制額を超える価格で販売を行った。しかし、当該犯行後、裁判に至るまでの昭和27年6月1日に小麦粉の価格統制が廃止された。被告人側は、この告示の廃止が刑法6条(刑の廃止)に該当し、また処罰することが憲法39条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は従前の大法廷判決を維持し、告示の廃止は「刑の廃止」には当たらないとした。具体的には、統制額の指定は経済情勢に対応するための行政措置であり、その廃止は事実上の変更であって、法律自体の改廃による刑の廃止と同視できない。さらに、憲法39条は行為時に適法であった行為を遡及して処罰することを禁じるものであり、本件のように行為時に有罪であった行為を裁判時の法令に基づき処罰することは、同条の禁止する範囲に含まれないと評価した。
結論
本件における価格指定告示の廃止は、刑法6条の刑の廃止には当たらず、また被告人を処罰することは憲法39条にも違反しないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和26(れ)1181 / 裁判年月日: 昭和26年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪成立後に当該行為を規制していた価格指定の告示が廃止された場合であっても、既に成立した犯罪の刑罰を廃止するものではなく、刑法6条や刑訴法337条2号による免訴等の対象にはならない。 第1 事案の概要:被告人が、物価統制令に違反する行為を行ったとして起訴された。しかし、当該犯罪の成立後かつ裁判の確…
実務上の射程
限時法や委任命令の有効期間満了・改廃が、刑法6条の「刑の廃止」に該当するかという論点(いわゆる限時法の追及効)において、判例は一貫して「事実上の変更」と「法律の変更」を区別し、原則として追及効を認める立場である。司法試験においては、行政規制の変更が「刑の廃止」にあたるかを論じる際のリーディングケースとして活用すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)3325 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】統制価格を指定した告示の廃止は、単なる事実関係の変更にすぎず、刑法6条および刑訴法337条2号にいう「刑の廃止」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は統制価格を超えて物品を販売したとして起訴されたが、判決前に当該価格を指定していた告示が廃止され、自由価格による取引が可能となった。弁護人は、こ…