判旨
判決における法令の適用の判示においては、いかなる法令を適用して主文の判断をするに至ったかが理解できるのであれば、適用条文を羅列する形式であっても適法である。
問題の所在(論点)
刑訴法335条1項が求める「法令の適用」の判示において、適用条文を羅列する形式は、裁判所の判断過程を示すものとして許容されるか。
規範
判決書の法令の適用(刑訴法335条1項)の判示に関しては、いかなる法令を適用して主文の判断をするに至ったかが分明であるならば、適用条文を順次羅列して示す方法をとっても差し支えない。
重要事実
被告人は二個の窃盗罪(併合罪)に問われ、第一審判決を受けた。第一審判決の法令の適用欄では、適用条文が羅列される形式で判示されていたが、その内容は、第一の罪について最も重い窃盗罪の刑に併合罪加重をし、第二の罪についても同様に加重した刑期範囲内で各懲役3月に処する趣旨であった。被告人側は、このような適条の判示方法は判例に反し、不適切であると主張して上告した。
あてはめ
一審判決の判示内容を精査すると、二個の併合罪について、それぞれ最も重い窃盗罪(判示第一の(一)および(二))を選択し、併合罪加重(刑法45条前段、47条)を行った刑期の範囲内で刑を量定した趣旨が明確に読み取れる。このように、主文を導き出すための法的根拠と計算の過程が客観的に分明である以上、条文を羅列する形式であっても、同条が要求する法令の適用の判示として欠けるところはないと解される。
結論
法令の適用の判示は、主文の導出過程が理解可能であれば条文の羅列形式でも適法であり、本件判決に違法はない。
実務上の射程
判決書の記載事項(刑訴法335条1項)に関する形式的要件の緩和を示す。実務上、複雑な併合罪であっても、結論に至る論理的道筋が判決書全体から読み取れるのであれば、簡略な記載であっても理由不備等の違法とはならないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和23(れ)1631 / 裁判年月日: 昭和24年3月29日 / 結論: 棄却
一 「法令ノ適用」というのは、これらすべての法規の適用をさしているのではなく「罪トナルベキ事實」に適用されて被告人の刑事責任を生ずるに直接關係ある法令の正條の摘用を意味しているのである、されば所論の昭和二二年法律第一二四號附則第四項のような手續的法規の適用は有罪判決に示す必要がないのである、また假りに右の規定が有罪判決…