所論は累犯にならない前科を量刑の資料としたことは、憲法一四条の法の下における国民平等の原則に反すると主張するのであるが原判決説示のとおり、詐欺罪の量刑に当り犯行の動機、罪質、態様、回数、騙取した金員の額並びに物品の種類数量その他記録に現われた諸般の情状のほか殊に前科の点を考量の資料とすることはむしろ当然でありまたこれを制限する法規は存在しない。従つて所論違憲の主張は前提を欠き適法な上告理由とならない。
累犯にならない前科を量刑の資料とすることと憲法第一四条
憲法14条
判旨
詐欺罪の量刑において、累犯に該当しない前科を量刑の資料として考慮することは、憲法14条の法の下の平等に反せず適法である。
問題の所在(論点)
累犯(刑法56条等)の規定に該当しない前科を、裁判所が量刑の情状として考慮することは、法の平等原則等に照らして許されるか。
規範
量刑の判断にあたっては、犯行の動機、罪質、態様、回数、利得額等の諸般の情状のほか、前科の存在を考量資料とすることは当然であり、これを制限する法規は存在しない。
重要事実
被告人が詐欺罪に問われた事案において、原審は累犯(刑法56条)の要件を満たさない過去の犯罪経歴(前科)を量刑の判断材料として用いた。これに対し被告人側は、累犯にならない前科を量刑資料とすることは、憲法14条の平等原則に反する違法なものであると主張して上告した。
あてはめ
量刑は、犯行そのものの性質や態様に加え、被告人の性格や経歴等の諸般の事情を総合して決定されるべきものである。本件における詐欺罪の量刑判断において、犯行の回数や騙取額といった客観的事実に加え、被告人の更生可能性や反社会性の程度を示す指標となる「前科」を考慮することは、適正な刑の算定のために合理的な関連性を有する。累犯加重規定に該当しないとしても、前科という事実を情状として評価することを禁止する法的根拠はなく、憲法14条にも抵触しない。
結論
累犯にならない前科を量刑の資料とすることは適法であり、憲法14条違反には当たらない。
実務上の射程
量刑判断における裁判所の広範な裁量を認める判例である。刑法上の累犯加重(必要的加重)の要件を満たさない場合であっても、裁判所は「犯人の性格、経歴、犯罪の動機」等の一般的情状として、前科を裁量的量刑判断の資料に用いることができるという実務上の運用を肯定している。
事件番号: 昭和28(あ)4719 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】累犯加重を規定する刑法の各条項は、憲法14条が定める法の下の平等に違反しない。過去の犯罪前科を理由に刑を重くすることは、合理的な根拠に基づく差別として容認される。 第1 事案の概要:被告人は前科を有していたところ、刑事裁判において刑法56条以下の累犯加重規定が適用された。これに対し、被告人側は、一…