新刑事訴訟法においては、所論「有罪の判決を受くるもその確定を見ざる間は、罪なき人として目すべきものとする」從前の原則は變更せられ、苟くも第一審において有罪判決の宣告があつたときは、無罪の推定は覆えり、却つて有罪の推定を受くべきであること刑訴法第三四三條第三四四條第三四八條等の規定によつて明らかである。從つて、右別件が所論のごとく控訴中で、未確定であるとしても、原判決が無罪と推定さるべき事實を有罪のものとして量刑に參酌した違法があるとはいえない。
有罪判決の言渡による有罪判決の言渡による有罪の推定――未確定の有罪判決を量刑に參酌するのは違法か
刑訴法343條,刑訴法344條,刑訴法348條,刑訴法381條
判旨
刑の量定において、第一審で有罪判決の宣告があった未確定の別件を参酌することは、無罪の推定を覆すに足りる事情として許容される。
問題の所在(論点)
未確定の別件(第一審で有罪宣告を受けたが控訴中の事実)を、被告人の経歴や犯情として量刑の資料に参酌することが、無罪推定の原則に反し違法となるか。
規範
刑の量定は、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の情状及び犯罪後の情況、並びに経歴や習慣等を総合的に参酌して事実審裁判所の裁量により決定される。第一審で有罪判決の宣告があった事実は、刑事訴訟法の規定(343条等)に照らし、無罪の推定を覆して有罪の推定を生じさせるため、量刑資料として参酌することが可能である。
重要事実
被告人は、本件犯罪のほかに、他人の金員1万7500円を横領した事実、および私文書偽造・同行使・詐欺罪により第一審で懲役11か月の判決を受けた経歴を有していた。原審は、これらの別件が控訴中であり未確定であったものの、本件の犯情と併せて考察し、第一審の量刑を相当と判断した。
あてはめ
新刑事訴訟法下では、第一審において有罪判決の宣告があったときは無罪の推定は覆り、むしろ有罪の推定を受けるべきである(刑訴法343条、344条、348条参照)。本件において、原審が別件の有罪宣告事実を被告人の経歴として評価し、量刑に反映させたことは、適法な手続に基づく裁量の範囲内といえる。したがって、当該別件が控訴中であっても、これを量刑資料とすることに違憲・違法の点はない。
結論
控訴中の未確定な別件であっても、第一審で有罪判決が宣告されている場合には、量刑上の資料として参酌することができる。
実務上の射程
量刑資料の範囲に関するリーディングケース。答案では、被告人の前科・余罪を量刑上いかに評価するかという文脈で、第一審判決済みの事実に限定して「有罪の推定」を根拠に許容性を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和41(あ)2163 / 裁判年月日: 昭和42年9月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の起訴されていない余罪事実を量刑上参酌することは、それが犯情の一として参酌されるものである限り、憲法31条、38条、39条に違反せず適法である。 第1 事案の概要:被告人は、背任罪(予備的に詐欺罪)で起訴されたが、裁判所は量刑の判断にあたり、起訴されていない第三者(AおよびB)に対するいわゆ…