判旨
上告審において原審で主張・判断されていない憲法違反等の事項を新たに主張することは、特段の事情がない限り、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
原審で主張も判断もされていない憲法違反等の事由を、上告審において新たに上告理由として主張することができるか。
規範
刑事訴訟法405条の上告理由において、憲法違反や判例違反を主張する場合、原則として原審において主張され、かつ判断を経ていなければならない。原審で主張・判断されていない事項を上告審で初めて主張することは、適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人が憲法31条(適正手続き)の解釈誤りや、大審院判例への違反、審理不尽、さらには憲法35条(住居の不可侵)違反などを理由に上告を申し立てた事案。しかし、これらの主張の一部は原審(二審)において全く主張されておらず、当然ながら原判決による判断も示されていなかった。
あてはめ
最高裁は、憲法31条違反の主張については「原判決の認定を非難するに過ぎない」として実質的な上告理由を否定した。また、憲法35条違反の主張等については、原審において主張がなく判断も経ていない事項であることを指摘した。刑訴法405条が定める上告理由の趣旨に照らせば、原審の判断の当否を争うべき上告審において、未提出の主張を持ち出すことは手続上許容されないと解される。
結論
原審で主張・判断されていない事項を理由とする上告は不適法であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
上告理由の制限(刑訴法405条)に関する基本原則を示す。答案上では、上告審の構造(事後審・法律審)を説明する際や、憲法違反の主張が事実上単なる事実誤認の主張に過ぎない場合の「憲法に名を籍りて」というフレーズの引用として有用である。
事件番号: 昭和28(あ)4132 / 裁判年月日: 昭和30年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張して上告がなされた場合であっても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎないときは、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人(または弁護人)が、原判決に対して憲法違反を理由として上告を申し立てた。しかし、その主張の具体的な内容は、実質的には刑事訴訟法の規…
事件番号: 昭和25(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法61条が定める被告人の勾留に関する告知手続の不備を憲法31条違反として争うことは、実質的には同法違反の主張に過ぎず、原審で主張していない事項は適法な上告理由にならない。 第1 事案の概要:被告人は勾留等の手続に関して不服を申し立て、憲法31条(適正手続の保障)違反を主張して上告した。しか…