判旨
刑事訴訟法61条が定める被告人の勾留に関する告知手続の不備を憲法31条違反として争うことは、実質的には同法違反の主張に過ぎず、原審で主張していない事項は適法な上告理由にならない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法61条に基づく勾留に関する告知手続の不備を、憲法31条違反として上告理由とできるか。また、原審で主張しなかった事項を上告理由とすることの適法性が問題となる。
規範
刑事訴訟法61条の規定(被告人に対し、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴く機会を与えること)に係る手続的瑕疵を憲法31条違反と主張する場合であっても、それが実質的に単なる刑事訴訟法違反の主張にとどまるときは、原審において主張しなかった事項についての上告は認められない(刑事訴訟法405条参照)。
重要事実
被告人は勾留等の手続に関して不服を申し立て、憲法31条(適正手続の保障)違反を主張して上告した。しかし、当該主張は刑事訴訟法61条に定める勾留の際の手続(告知・聴聞)に関する不備を指すものであり、かつ、第一審や控訴審(原審)の段階では一度も争点として提出されていなかった。
あてはめ
本件において弁護人が主張する憲法31条違反の事由は、その実質を検討すると刑事訴訟法61条違反の主張に過ぎない。また、記録によれば、被告側は原審においてこの点について何ら主張を行っていない。したがって、上告審で初めて持ち出された手続上の瑕疵に関する主張は、適法な上告理由を構成しない。さらに、記録を精査しても刑事訴訟法411条を適用して職権で破棄すべき事由も認められない。
結論
本件上告は棄却される。原審で主張しなかった刑事訴訟法違反(実質的な法条適用の不備)の事項は、憲法違反の名を借りたとしても適法な上告理由とはならない。
実務上の射程
上告理由の制限に関する判断であり、実務上、憲法違反を主張する際には単なる法律違反の焼き直しではない固有の憲法問題を含んでいる必要があること、および原審までの主張の有無が厳格に問われることを示唆している。答案上は、上告理由の適格性や、適正手続の保障(憲法31条)と具体的訴訟手続(刑訴61条等)の関係を論じる際の参照となる。
事件番号: 昭和26(れ)2023 / 裁判年月日: 昭和27年1月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法31条違反を主張しても、その実質が単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、刑事訴訟法405条所定の適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法31条違反を理由として上告を申し立てたが、その具体的な主張内容は単なる訴訟法上の手続違反を指摘するものであった。 第2 問題の所在(論…