判旨
控訴審における事実の取調べは、第一審判決の当否を判断するために必要な範囲に限られ、その要否は裁判所の裁量に委ねられる。第一審で請求可能であった証拠につき、控訴審で新たに証拠調べを求める場合には、その事由を疏明する必要がある。
問題の所在(論点)
控訴審における事実の取調べの要否およびその判断基準(刑訴法393条1項)。第一審で請求可能であった証拠を控訴審で請求する際の手続的要件と裁判所の裁量権が問題となる。
規範
現行刑訴法上、控訴審は事後審としての性格を有するため、事実の取調べは第一審判決の当否を判断するために必要な範囲に限定される。したがって、刑訴法393条1項但書の場合を除き、事実の取調べを行うか否かは裁判所の合理的な裁量に委ねられる。また、第一審の弁論終結前に請求できなかった証拠でない限り、その事由を疏明する資料の提出が必要となる。
重要事実
被告人Bの弁護人は、第一審では被告人の精神状態に関する鑑定等を申請していなかったが、控訴審の第2回公判期日に至り、犯行当時の精神状態を立証するため医師の証人尋問および精神鑑定を請求した。しかし、当該請求に際して第一審の弁論終結前に取調べを請求できなかった理由を疏明する資料が提出されなかったため、原審はこれらを却下した。
あてはめ
本件において、弁護人が請求した精神鑑定等は、第一審の段階で何ら申請された形跡がなく、控訴審で新たに請求されたものである。しかし、弁護人は第一審で当該証拠を請求できなかったことについての適正な疏明資料を提出していない。控訴審は第一審判決の当否を事後的に審査する場であり、裁判所が必要性を認めない限り、第一審で提出し得た証拠を漫然と採用すべき義務はない。したがって、原審が本件請求を却下したことは、裁量の範囲内として正当である。
結論
控訴審における証拠調べ請求の却下は正当であり、憲法31条等の違反には当たらない。
事件番号: 昭和27(あ)4393 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論の分離・併合は裁判所の自由裁量に属する事項であり、当事者の請求に拘束されるものではない。また、控訴審において第1審で請求し得た証拠の申出を却下することは、特段の事由がない限り裁判所の合理的な裁量の範囲内である。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、控訴審(原審)の第3回公判期日において、被告人…
実務上の射程
控訴審の事後審構造を明確にした判例であり、事実取調べの裁量性を強調する。答案上は、控訴審での新証拠請求の可否が問われる場面で、刑訴法393条1項の解釈として「事後審的性格」を理由に挙げる際に活用する。
事件番号: 昭和35(あ)1499 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
被告人の最終陳述は第一審手続の規定であり、第二審裁判所が事実の取調をした場合には刑訴三九三条四項の弁論はできるが、最終陳述の規定(刑訴二九三条規則二一一条)の準用はないものと解すべきであるから、原審が被告人に最終陳述の機会を与えなかつたからといつて、これを違法ということはできない。
事件番号: 昭和26(れ)330 / 裁判年月日: 昭和28年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べの範囲および限度は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられており、特定の証人の尋問請求を却下したとしても、直ちに違法となるものではない。 第1 事案の概要:被告人が詐欺等の罪に問われた事案において、第一審および原審(控訴審)は、弁護人が請求した証人の尋問を却下した。これに対し弁護人側は、詐取…