判旨
弁論の分離・併合は裁判所の自由裁量に属する事項であり、当事者の請求に拘束されるものではない。また、控訴審において第1審で請求し得た証拠の申出を却下することは、特段の事由がない限り裁判所の合理的な裁量の範囲内である。
問題の所在(論点)
1. 控訴審において第1審で提出可能であった証拠の取調請求を却下することは許されるか。2. 弁論の併合請求に対し、裁判所がこれを行わずに審理を進めることは違法か。
規範
1. 弁論の分離又は併合(刑訴法313条1項)は、裁判所がその自由裁量によって決すべき事項であり、当事者からの請求があったとしても、裁判所はこれに拘束されない。2. 控訴審における証拠調べ(刑訴法393条1項)において、第1審の弁論終結前に取調を請求することができなかったことを疎明する資料の提出がない場合、裁判所はその自由な裁量によって証拠の採否を決定することができる。
重要事実
被告人の弁護人は、控訴審(原審)の第3回公判期日において、被告人の犯行当時の精神状態を立証するため証人尋問と精神鑑定の請求を行った。しかし、弁護人は第1審では情状に関する証人尋問を求めたのみで、精神状態に関する鑑定等の請求は行っておらず、かつ第1審で請求できなかった事由の疎明もなかった。また、弁護人は別件との併合審理を請求したが、原審はこれを採用せず各別に審理を進行させた。弁護人は、これらの証拠却下や不併合が憲法31条、37条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 証拠請求について、弁護人が控訴審で提出した鑑定請求は、第1審の弁論終結前に請求できなかった事情の疎明がない。したがって、刑訴法393条1項但書の拘束を受けず、原審が十分な調査を遂げた上で自由な裁量によりこれを却下したことに違法はない。2. 弁論の併合について、これは裁判所の専権的な裁量事項であり、当事者の請求に拘束力はない。原審が併合審理の請求を採用せず、各別に審理したとしても、裁量権の逸脱とは認められない。
結論
原審の措置に憲法違反や訴訟法違反の違法はなく、上告を棄却する。
事件番号: 昭和27(あ)4396 / 裁判年月日: 昭和29年1月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審における事実の取調べは、第一審判決の当否を判断するために必要な範囲に限られ、その要否は裁判所の裁量に委ねられる。第一審で請求可能であった証拠につき、控訴審で新たに証拠調べを求める場合には、その事由を疏明する必要がある。 第1 事案の概要:被告人Bの弁護人は、第一審では被告人の精神状態に関する…
実務上の射程
裁判所の訴訟指揮権(弁論の分離・併合)の広範な裁量を認める判例として重要である。実務上、併合請求に対する裁判所の不作為を争うことは極めて困難であり、裁量権の著しい逸脱・濫用がない限り適法とされる。また、控訴審での証拠請求については刑訴法393条1項の要件を厳格に解する実務を支える論理となっている。
事件番号: 昭和28(あ)1420 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する勾留の不法は、それ自体が原判決自体の違法を構成するものではなく、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反および判例違反等を理由に上告した事案。上告趣意において、事実誤認や証拠取捨選択の不当を主張するとともに、被告人は勾留の不法を訴え、これを理由として…
事件番号: 昭和28(あ)1574 / 裁判年月日: 昭和30年1月25日 / 結論: 棄却
検察官が書面について証拠調の請求をして立証趣旨を述べ、裁判所からその証拠調の請求について意見を求められたのに対し、被告人から異議がない旨の陳述をし、さらに右証拠調実施後、裁判所から反証の取調の請求等により、証拠の証明力を争うことができる旨を告げられたのに対しても、被告人において別にないと答えた場合においては、被告人はそ…
事件番号: 昭和30(あ)2372 / 裁判年月日: 昭和30年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗の恐れがなく中立公正な裁判所を指し、量刑不当や審理不尽の主張は当然には上告理由としての憲法違反を構成しない。 第1 事案の概要:被告人が、量刑不当および審理不尽を理由として上告を申し立てた事案。弁護人は、これらの事由が刑訴法405条の上告理由に該当…