被告人の最終陳述は第一審手続の規定であり、第二審裁判所が事実の取調をした場合には刑訴三九三条四項の弁論はできるが、最終陳述の規定(刑訴二九三条規則二一一条)の準用はないものと解すべきであるから、原審が被告人に最終陳述の機会を与えなかつたからといつて、これを違法ということはできない。
第二審裁判所が事実の取調をした場合と最終陳述の規定(刑訴法第二九三条規則第二一一条)の準用の有無
刑訴法293条,刑訴法393条,刑訴規則211条
判旨
控訴審において、刑事訴訟法293条2項および刑事訴訟規則211条に基づく被告人の最終陳述の規定は準用されない。したがって、事実の取調べが行われた場合であっても、被告人に最終陳述の機会を与えないことは違法ではない。
問題の所在(論点)
控訴審(第二審)において、第一審の規定である被告人の最終陳述(刑訴法293条2項、刑訴規則211条)が準用されるか。特に、控訴審が事実の取調べを行った場合に、最終陳述の機会を保障しないことが違法となるかが争点となった。
規範
控訴審手続においては、被告人の最終陳述に関する規定(刑訴法293条2項、刑訴規則211条)の準用はない。刑事訴訟法393条4項に基づく弁論を行うことは可能であるが、これを超えて被告人に最終陳述の機会を与える義務を裁判所は負わない。
重要事実
被告人Bは控訴審において事実の取調べが行われた。その後、原審(控訴審)は被告人に対して最終陳述の機会を与えずに審理を終結させた。これに対し、被告人側は、最終陳述の機会を与えなかったことが訴訟手続の違法であり、憲法違反等に該当すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、最終陳述の規定はあくまで「第一審手続」の規定であることを指摘した。控訴審において事実の取調べをした場合、刑訴法393条4項に基づき弁論をすることはできるが、それ以上に第一審の最終陳述規定を準用すべき根拠はない。したがって、本件で原審が被告人に最終陳述の機会を与えなかったとしても、手続上の違法は認められないと判断した。
結論
控訴審において被告人の最終陳述規定は準用されないため、その機会を与えなかったとしても違法ではない。上告棄却。
実務上の射程
控訴審における手続的保障の範囲を画定した判例である。答案上は、控訴審の構造(事後審的性格)に関連し、第一審の手続規定がどこまで準用されるかを論述する際の根拠として機能する。ただし、実務上は被告人の防御権に配慮して発言機会を与える運用も一般的であるため、法的な「義務」の存否を論じる文脈で用いるべきである。
事件番号: 昭和27(あ)4396 / 裁判年月日: 昭和29年1月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審における事実の取調べは、第一審判決の当否を判断するために必要な範囲に限られ、その要否は裁判所の裁量に委ねられる。第一審で請求可能であった証拠につき、控訴審で新たに証拠調べを求める場合には、その事由を疏明する必要がある。 第1 事案の概要:被告人Bの弁護人は、第一審では被告人の精神状態に関する…
事件番号: 昭和31(あ)4407 / 裁判年月日: 昭和35年4月12日 / 結論: 棄却
一 被告人が控訴をした事件について、控訴裁判所が、第一審において有罪とした手段結果の関係にある私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載の犯罪事実のうち、公正証書原本不実記載の点を無罪とした場合に、第一審の刑より軽い刑を言い渡さなくても刑訴第四〇二条に違反しない。 二 刑訴法第四八条第二項にいう「重要な事項」とは、ことが…
事件番号: 昭和33(あ)1883 / 裁判年月日: 昭和36年7月5日 / 結論: 棄却
控訴審が刑訴第三九三条第一項又は第二項の規定による事実の取調をした上同第四〇〇条但書により直ちに判決をする場合には、弁護人は右事実取調の結果に基いて弁論することができるに止まり(同第三九三条第四項)、同第四〇四条により同第二九三条を準用して被告人及び弁護人をして意見を陳述させ、また刑訴規則第二五〇条により同第二一一条を…