一 被告人が控訴をした事件について、控訴裁判所が、第一審において有罪とした手段結果の関係にある私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載の犯罪事実のうち、公正証書原本不実記載の点を無罪とした場合に、第一審の刑より軽い刑を言い渡さなくても刑訴第四〇二条に違反しない。 二 刑訴法第四八条第二項にいう「重要な事項」とは、ことがら自体からみて訴訟法上重要な意義をもつ事項をいうのではなく、特に公判調書に記載しておくことを必要とする事項を意味するのであり、いかなる事項がこれに該当するかは、裁判所の規則の定めるところに委ねられているものと解すべきである。
一 控訴裁判所が第一審において有罪とされた手段結果の関係にある犯罪事実の一部を無罪とし、なお第一審の刑より軽い刑を言い渡さなかつた場合と刑訴法第四〇二条 二 刑訴法第四八条第二項にいう「重要な事項」の意味
刑訴法402条,刑訴法48条2項,刑訴規則44条
判旨
控訴審における事実取調において、裁判所は必ずしも常に被告人を立ち合わせ弁論の機会を与えなければならないわけではない。また、公判調書の記載事項を定める規則は、刑訴法の委ねる範囲内で適法に運用されるべきものである。
問題の所在(論点)
1. 控訴審の事実取調において被告人の立会いと弁論の機会を与えることが憲法31条により常に要求されるか。2. 刑訴法48条2項にいう公判調書の記載事項である「重要な事項」の意義。3. 刑訴法402条が第1審より軽い刑を言い渡すべき義務を定めているか。
規範
控訴審は事後審的性格を有することから、事実の取調を行う場合であっても、憲法31条の適正手続の保障の下で必ずしも常に被告人を立ち合わせ、弁論の機会を与えなければならないものではない。また、刑事訴訟法48条2項の「重要な事項」とは、事象の訴訟法上の客観的意義ではなく、特に公判調書に記載すべき必要性がある事項を指し、その具体的範囲は最高裁判所規則の定めに委ねられる。
重要事実
事件番号: 昭和59(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和60年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を量刑の資料とする際、それが実質的に未起訴の犯罪を処罰する趣旨で考慮されたものでない限り、憲法31条及び39条には反しない。 第1 事案の概要:被告人は有印私文書偽造・同行使等の罪で起訴された。第一審判決は、本件各犯行の犯罪組成物件を没収するとともに、未起訴の事実(余罪)を量刑の資料として考慮…
被告人らが、第1審の判決を不服として控訴したが、控訴審において被告人を立ち合わせた事実取調や弁論の機会が十分に与えられなかったこと、および公判調書の記載事項に関する手続に違法があること等を理由に、憲法31条(適正手続)や刑訴法402条(不利益変更禁止)等に違反するとして上告した事案。
あてはめ
控訴審において事実の取調が行われる際、被告人の立会いや弁論の機会を欠いたとしても、直ちに憲法31条違反となるものではない(既判例の踏襲)。また、刑訴法48条2項の「重要な事項」は規則により具体化されるべきものであり、本件の公判調書手続に違法は認められない。さらに、刑訴法402条は第1審の判決より重い刑を言い渡すことを禁ずるのみであり、減軽を強制する趣旨ではない。本件では第1審より重い刑が科された事実は認められず、手続上の違憲・違法は存在しない。
結論
控訴審での手続に憲法違反や法令違反は認められず、第1審の刑を維持した原判決は適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
控訴審における被告人の出席権や弁論権の限界を示す際の根拠となる。実務上、事後審構造をとる控訴審において、事実取調が限定的・補足的に行われる場合における手続的保障の程度を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)4343 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
私文書偽造罪の判示として「行使の目的を以て」なる文言の記載がなくとも判文の全体からその趣旨が認め得られるときは、判示として欠くるところはない。
事件番号: 昭和35(あ)1499 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
被告人の最終陳述は第一審手続の規定であり、第二審裁判所が事実の取調をした場合には刑訴三九三条四項の弁論はできるが、最終陳述の規定(刑訴二九三条規則二一一条)の準用はないものと解すべきであるから、原審が被告人に最終陳述の機会を与えなかつたからといつて、これを違法ということはできない。
事件番号: 昭和28(あ)4636 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 棄却
一 控訴審が控訴趣意として主張された量刑不当について判断せず、他の控訴趣意を理由あるものとして第一審判決を破棄自判して刑を言渡したからとて、審理不尽であるということはできない。 二 量刑不当の控訴趣意は、第一審判決を破棄すべき理由として主張されたのであるから、他の控訴趣意が理由あるものとして第一審判決が破棄される以上、…
事件番号: 昭和31(あ)3965 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
一 刑訴法第三九〇条は憲法第三一条に違反しない。 二 上訴裁判所は、被告人の上訴を棄却する場合においても、その審級における未決勾留日数を本刑に算入することができる。