一 刑訴法第三九〇条は憲法第三一条に違反しない。 二 上訴裁判所は、被告人の上訴を棄却する場合においても、その審級における未決勾留日数を本刑に算入することができる。
一 刑訴法第三九〇条の合憲性 二 被告人の上訴を棄却する場合とその審級における未決勾留日数の通算
刑訴法390条,刑訴法495条,憲法31条,刑法21条
判旨
刑事訴訟法390条は控訴審における被告人の出頭を原則として不要としているが、これは事後審構造に基づく合理的な立法政策であり、憲法31条の適正手続に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴審において被告人の出頭を要しないと定める刑事訴訟法390条の規定が、憲法31条の適正手続の保障に違反するか。事後審構造における被告人の出席権の範囲が問題となる。
規範
最高裁判所の裁判権及び審級制度の設計は、憲法上法律の定めに委ねられた立法政策の問題である。現行刑事訴訟法下の控訴審は事後審であり、その審理は原則として弁論に限られる(同法388条、389条)。そのため、被告人の出頭が権利保護上重要と認められる場合を除き、出頭を義務付けないことは合理性を有する。また、公判期日は被告人に通知され、出頭の権利自体が否定されるわけではないため、適正手続の保障に反しない。
重要事実
被告人が控訴審の公判期日に出頭しないまま審理が行われ、判決が言い渡された事案。弁護人は、被告人を出頭させずに審理・判決を行うことを可能とする刑事訴訟法390条の規定は、憲法31条が定める適正な手続を保障する原則に違反し、違憲であると主張して上告した。
事件番号: 昭和31(あ)4407 / 裁判年月日: 昭和35年4月12日 / 結論: 棄却
一 被告人が控訴をした事件について、控訴裁判所が、第一審において有罪とした手段結果の関係にある私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載の犯罪事実のうち、公正証書原本不実記載の点を無罪とした場合に、第一審の刑より軽い刑を言い渡さなくても刑訴第四〇二条に違反しない。 二 刑訴法第四八条第二項にいう「重要な事項」とは、ことが…
あてはめ
刑事訴訟法は、控訴審を覆審ではなく事後審として位置づけている。本件においても、控訴審の審理は法律上の弁論が中心となり、被告人本人の出頭が防御上不可欠な場面は限定的である。同法390条は、被告人の出頭が「権利保護上重要と認められる場合」以外について義務を免除したに過ぎない。さらに、期日通知により出頭の機会自体は保障されている。したがって、被告人の不在下で審理・判決を行うことは、立法府に委ねられた合理的な審級制度の運用範囲内といえる。
結論
刑事訴訟法390条は憲法31条に違反しない。したがって、被告人を出頭させずに審理・判決を行った控訴審の判断は適法である。
実務上の射程
刑事手続における適正手続の具体的内容は、審級の性質(事後審か覆審か)に応じて立法政策的に決定できるという「制度的保障」の枠組みを示す。答案上は、被告人の出席権を論じる際、第1審(必要的出席)と控訴審(原則不要)の対比において、事後審構造を理由に合理性を説明する論拠として活用する。
事件番号: 昭和33(あ)701 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所が事実の取調べをすることなく、訴訟記録と第一審の証拠のみに基づき、第一審の量刑を不当として被告人に不利益に変更することは、憲法および刑訴法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し、第一審は懲役1年の判決を言い渡した。これに対し検察官が量刑不当を理由に控訴したところ、控訴審(原審)は…
事件番号: 昭和28(あ)1420 / 裁判年月日: 昭和28年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する勾留の不法は、それ自体が原判決自体の違法を構成するものではなく、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反および判例違反等を理由に上告した事案。上告趣意において、事実誤認や証拠取捨選択の不当を主張するとともに、被告人は勾留の不法を訴え、これを理由として…
事件番号: 昭和35(あ)1499 / 裁判年月日: 昭和37年2月22日 / 結論: 棄却
被告人の最終陳述は第一審手続の規定であり、第二審裁判所が事実の取調をした場合には刑訴三九三条四項の弁論はできるが、最終陳述の規定(刑訴二九三条規則二一一条)の準用はないものと解すべきであるから、原審が被告人に最終陳述の機会を与えなかつたからといつて、これを違法ということはできない。